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黒井 心

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人は皆、仮面を付けている

知らない人と話すときの仮面
友人に向けての笑顔の仮面
親に対して隠し事をする仮面

いつ、どこで、だれと、何を、どうして、どのようにして……

つまり5W1Hどの様な状況であっても仮面を付けている

外す時なんてない

自分自身にすら本当の顔を見せられない

仮面の裏の顔がどれだけ黒く醜いのか分からない

外すのが恐くて外さなかったらいつの間にか外せなくなってしまう

でもみんな外せなくなっているみたいだから知らない間にそれが当たり前になっている

最後には自分自身に付けている仮面が素顔だと思いこむようになる



こんな本を読んだことがある

仮面をつけることを義務づけられた世界の話だ

主人公は小学生だが、仮面をつけなければいけないことを疑問に思いながら生活をしていた
ある時、主人公は河原に立つ少女が仮面を外して悲しげな顔をしているのを目撃した
川の向こうは仮面を外した人間が住んでいる土地と言われている
主人公は少女のことが気になったが、遠くから見ている意外できなかった
数日後に川の向こうへ行った子供がいると学校で噂になっていた
主人公は少女のことだと思って河原に行くと、彼女の仮面が落ちていた
主人公は彼女を追うように川の向こうへ行く

…物語はここで終わっている

小学生の頃に読んだ作品だが今でもあの時、仮面はあってはいけないと思っていたとを覚えている

しかし今思えば非常に幼い考えだなと思う

そんなことを思った自分ですら仮面をつけて自分自身を偽らないと生きていけないのだ

自分は弱い存在だ

黒い素顔を見られるのが怖くて仮面をつけている

素顔を見られたらみんなが自分から離れて消えていくのではないか

最後には誰にも信用されなくなって孤独になるのではないか

そんなことを思ってしまうから仮面を外せない

みんなも仮面を付けていると思い込む

自分の付けている仮面こそ素顔だと思い込む



しかし、そうして逃げていてはいつかそんなことを忘れて仮面を外してしまうのではないか

いつの間にか仮面を外してしまって素顔をさらけ出してしまうのではないか

そんな恐怖を忘れてしまうことが恐ろしいなら「杭」を打ち込んでしまえばいい

自分が見ている素顔の裏にはいつも黒く醜い心があることを忘れないように

だから、自分の考えを表現する時に使う仮面にそんな意味を込めて「名前」という杭を打った



黒く醜い心を持つことを忘れるな…
作品名:黒井 心 作家名:黒井 心