梅雨時
土砂降りだ
大きめの傘をさしているが腕や足が若干濡れてしまう
耳元にあてたヘッドホンからは最近お気に入りの曲を大音量で延々とたれ流している
麻薬か何かのように流し続けている
そんなことをしながら俺はいつも通り物思いにふける
自分の生きる意味、死ぬ意味、運命の輪、不条理……
そんなことを考えては何か汚い感情がわいてきたりする
しかしそんな思いは大音量の波に流されて、最後には自己満足だけが残る
今日も変わらず波がやってくる
薄汚い感情を押し流してくれる
その時思った
音楽って「宗教」ではないのか?
太古の宗教は人々の生活の支えとして成り立っていた
現代の音楽はその流れを僅かながら受け継いでいるのではないだろうか
宗教には種類があり、さらに宗派が存在する
音楽にもジャンルがあり、さらにアーティストが存在する
一般大衆に受け入れやすいものもあれば、熱狂的な一部のものにのみ信仰されるものもある
見た目にこだわるもの…
親しみやすさにこだわるもの…
言葉一つ一つにこだわるもの…
様々な種類がある
しかしどれにしても、すべての人を救うにはいたらない
信じている人間にしか分からない物がある
そして違うものと分かり合おうとしない
そして争いがおこる…
その争いの中で疲れきった者に求められるのは結局「宗教」
強くなった「信仰」によってより深い亀裂ができ、また争いがおきる…
終わらないいたちごっこ…
そこまできて波がきた
そして今日も俺はヘッドホンから流れる音楽を楽しみながら、更なる物思いにふける
雨に濡れた腕や足が少し冷たく感じられた