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RUN ~The 1st contact~

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「これはランじゃないの? ううん、ランはコードネーム……そうだ、このヴィクトル・?・アイゼンハワーだわ。ランのパスポートの一つに、確かその名前があった……」
 記憶を呼び起こし、独り言を呟きながら、圭子は名前を指で追っていく。
「ハリス・ド・ルカス、ヤヨイ・ハナエ……!」
 日本人と思われる名前を見つけ、圭子はもう一度、写真を見つめる。そして圭子の脳裏に、僅かながら引っ掛かりが出来た。
「花江はうちの本家の苗字……この写真の人が、ランと関係してるんだ。それで私や兄を守ってくれた。そうなのね?」
 圭子の家柄は旧家で、代々華道を受け継いでいる。圭子は分家なので華道をやったことはないが、親戚である本家の苗字は花江といった。偶然かはわからないが、ランが残した写真に写る女性が、圭子と何か関係があるのだと思いつく。
 逸る気持ちを抑えられず、圭子は写真の表裏を何度も見つめ続けた。
 やがて、圭子は写真の裏に、消えかけの文字があることに気がついた。あまりの古さにかすれているが、数字に見える。
「一、八六、四……一八六四年……この写真が、撮られた日?」
 あまりの恐ろしさに言葉を失い、いろいろな憶測が頭の中を飛び交う。
 もしその数字が撮影日だとすれば、もし写真の少年がラン本人だとするならば……そう考えれば、途方もない闇に満ちた場所に、足を踏み入れたことになる。
 そうでなくとも、百年以上も前の写真を、なぜランは圭子に渡したのか。考えれば考えるほど、謎が多い。
 圭子は静かに空を見上げた。すでに日は昇りきり、青空が広がっている。
「一八六四年……もしこの写真の子がラン本人だったら、ランは本当に百年以上生きていることになる……ううん、そんなことはあるはずがない。ランは自分の先祖の名を語っているのかもしれない。私の先祖と、ランの先祖が知り合いだったということかもしれない。なんにしても、私たちの関係は……」
 その時、上空を飛行機が飛んでいった。それと同時に、一筋の飛行機雲が空を割く。
「……ラン、あなたは何者なの? いったい、私とどういう関係が……」
 多くの謎を残したまま、コードネーム・ランと名乗る殺し屋は、圭子の前から突如として消えたのだった――。