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家族ごっこ【上】

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#5


 式は例の隠れ家レストランで行われた。皆がフォーマルに身を包み、いくつかのテーブルにわかれて席につく。
 
「本当は修一にウェディングドレスを着てほしかったんだけどね」
 
 白いタキシードが妙に似合っている望は残念そうに坂上を見つめた。女装を断固拒否した坂上は黒の礼服姿だ。望が中学時代に着ていたものを借りたのだがそれでもサイズが合わず、袖や裾が少々だぼついていた。
 
「これもなかなかいいよ。七五三みたいで」
 
 望はニヤニヤ笑って坂上を舐めるように眺めた。坂上は子供扱いに気分を害してそっぽをむく。
 
「何、怒ってるんだい?可愛いってほめてるんじゃないか」
「可愛いなんて言われても嬉しくないです」
 
 坂上は男だ。可愛いよりはかっこいいと言われたい。
 
「よし坂上、俺のジムに通え。男ならスポーツに打ち込むべきだ」
 
 ワイングラス片手に唐突に割り込んできたのは着崩したスーツ姿の誠だった。その出で立ちは、新郎の父親というよりはホストかジャパニーズマフィアである。
 
「酔ってるねダディ。修一に余計なこと吹き込まないでよ」
「ふふふ、まだ始まっていないのに飲み過ぎよ誠さん。若いふたりの邪魔をしては駄目……」
 
 いつのまに現れたのか、明美が誠の襟首を掴んで自分達の席に連れ戻した。深紅のドレスがよく似合っている。端から見ると彼女こそ新婦に見えることだろう。
 
「ええと、じゃあ新郎望と新婦坂上の新たな門出を祝って……乾杯!」
 
 仲人の綾小路はやや棒読み気味にグラスを高くあげた。ちなみにそこに坂上がいるだけで消臭効果があるらしく、マスクを取ってやたら清々しい顔をしていた。
 
『かんぱーい!』
 
 そこからは決まった段取りもなく食事ということになった。新しい家族や友人が入れかわり立ちかわりふたりの席にやって来ては祝福の言葉をかけていく。
 
「よかったね、坂上君。これで安心だっておばあちゃんも言ってたよ」
「あ、ありがとうございます元木さん」
 
 早苗はお祝いのプレゼントを差し出しながらニッコリした。ちなみに坂上はいまだ彼女の祖母に会ったことがない。
 
「ホントに嫁に行くんだな坂上。俺、今頃実感したよ」
 
 次に現れた斉藤は、なぜか少し涙ぐんでいた。
 
「いやいや、嫁とかじゃないから」
 
 坂上は小声で否定したが、斉藤はわかったのかわかっていないのか、「娘を嫁に行かせる父親の気分だ」と言って坂上の肩を抱いた。
 
「お前達と一緒にいると大川が現れないんだ。何でだろうな。まあ助かるからいいけど」
 
 綾小路は踊り出しそうな足取りでやってきて、坂上の手を両手で握った。
 
「わからないよ綾小路。もしかしたらすぐ近くにいて監視してるのかも。君、あんまり修一がいい匂いなものだから、鼻がバカになってるんじゃないかい?」
「ははは、まさか。そうだとしても、坂上君がいるだけで大川の臭いを感じなくなるなら願ったり叶ったりだな」
「……修一は僕のだからね」
 
 不愉快そうに顔を顰める望をぼんやりみつめながら、坂上は「大川さんって、そんなにきつい香水をつけてるのかな?」などと考えていた。
 
 こうして坂上は荒井家に引越しし、望との新婚(?)生活がはじまった。坂上は荒井家の人々に快く受け入れられた。
 
「私を本当の母と思ってくれたら嬉しいわ。ところで修一君、貴方は嘘なんかつかないわね?嘘つきと裏切り者は嫌いなの。どうか私達をうらぎらないでね」
「仲良くしてね坂上君。そうそう、早苗ちゃんのおばあちゃんのいうことは守った方がいいよ」
「君と一緒に暮らせるなんて嬉しいよ修一君。ところで君、トイレは好きかな?」
「気が向いたら、いつでもジムに来いよ坂上」
 
 誰もが坂上にあたたかく接し、優しくしてくれる。母子家庭で育ち、兄弟のいなかった坂上は、これが家族というものなのかと感激した。結婚式の日に家族で撮った記念写真が額に入れられ、リビングの壁に飾られた時は、なんだか照れ臭くもあったが嬉しかった。
 ひとつだけ気掛かりな事があった。望に「仕事はやめて、家事に専念してほしい」と言われたのだ。何でも、荒井家の人々は平日全員仕事や学校で家をあけるので、留守を頼みたいのだという。
 
「嫌ですよ、僕は望さんに養われたいわけじゃありません」
 
 プライドを守るため断ったが、しつこく請われて結局会社をやめることになってしまった。 
 主夫としての仕事は多かった。先ず、家族全員の朝食を作る。今までは明美がやっていた仕事だが、8時には出勤しなければならない彼女にとって負担だったのだ。友晴の弁当も用意する。他の者は出先の食堂を利用したり職場近くの店で済ませるという。家族全員がダイニングに揃うのを待って、食卓を囲む。談笑しながら、彼らの些細な態度に気を配り、必要ならおかわりを盛ったり、調味料を差し出したり、飲み物を注いだりする。食事が済んだら食器を洗いつつ職場や学校へ行く彼らを順に送り出す。ここで望に「いってらっしゃいのキス」をせがまれ一悶着あり、大抵は家長・誠に助けられる。全員がいなくなったら、ゴミ出し、掃除、洗濯、布団干しなどの雑事に追われ、自分のための昼食を作り(時には出前を頼むこともあった)、食器洗い、クリーニングへの洗い物の持ち出し、トイレや風呂の掃除、湯沸し、食品や日用品の買い出しなどをしているうちに、夕飯の支度をしなければならない時間となる。
 荒井家には「朝食・夕食は家族全員で」という家訓があって、全員が飲み会等に参加することもなく定時に帰宅する。そして皆が食卓についてから「いただきます」となるのだった。さらに食器洗い、洗濯などなどを済ませ風呂に入ると、一息つけるのは22時から23時頃になってしまう。やっと自分の時間を過ごせるかと思いきや望の部屋に引きずりこまれ、愛の営みを強要され、貞操を守るため格闘するうちに互いに疲れて就寝となる。
 もしかして荒井家の人々はただで働く住み込みの家政夫が欲しかっただけなんじゃないかと考えてしまう坂上だった。
作品名:家族ごっこ【上】 作家名:_ 消