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ぼく 4

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ぼくは人質らしい

「人質」の定義がわからないと言ったら辞書を投げられた

顔面で受け取るのを回避したら舌打ちされた

今度同じことをしてみよう、きっと華麗に顔面で受け止めてくれるに違いない。

約束を守らせるために拘束された人、金を要求するために強制的に監禁された人、要求を押し通すために脅迫手段として身柄を拘束された人、人質の意味はたくさんあった

共通していることと言えば、『誰かに何かをさせるために捕らわれている人』ということ。

でもそれならぼくは人質じゃないことになる

なぜなら、自称「誘拐犯」はぼくを拘束してはいない

家にいる間ぼくが森に入って迷った時、深夜過ぎに戻ったぼくはベッドで熟睡している「誘拐犯」を目撃している

ついでに言うなら旅の間なんて逃げ放題だ

「誘拐犯」はぼくに買い物用のメモを渡して、自分はその間別のところでまた別の用を足していることが多い

ぼくがごたごたに巻き込まれた時なんかは一人だけ真っ先に逃げようとしていた

ちなみにその時のことはいまだに根に持っているらしい、襟首掴んで無理矢理引きずっていったのがよほど恐怖だったのか

その後で怪力とかバケモノとか言われたが、ぼくだって人ひとり引きずっていくのはすごく大変だったことは明言しておく。

「誘拐犯」がぼくを拘束しないのは、ぼくも「誘拐犯」から離れる気がないというのもあるかもしれない

でもぼくが気づいた時にはすでにこの「人質」と「誘拐犯」という構図はできあがっていた。

知り合いに心当たりがない以上この自称「誘拐犯」に頼るほかはないとぼくは思う

それにぼくは常識というものを忘れ去っている、もしくは知らないらしく、その対応に慣れた人間が傍にいると非常に楽なのだ

要するに事情を説明して世話を焼いてくれる新たな善人を探すより、事情を知っていてある程度世話を焼かざるを得ない、決して善人ではないがぼくの性格にある程度慣れた正体不明の人間だかどうかすらわからない存在が既にいるのだから、わざわざ新たな新天地を目指す気にはならないというか、正直にいうと面倒くさいのだった。

よしんば「誘拐犯」の言うとおり人質状態だとしても、自由を束縛されているわけでもなし、この状態が死ぬまで続くとは考えにくい

このままの状態に不満があるわけではないのだから、状況が動くまでは静観しておこうと思うわけだ

まあ、このままの状態が死ぬまで続いても、それはそれで面白そうというか、だが。
作品名:ぼく 4 作家名:ハーレイ