うそみたいにきれいだ
7月11日 ばら
(オオカミ店長と雪丸さん)鉢植えの前で小さくなった大きいやつは、ばらの花がらをむしってはエプロンの腹にためながら日すがら倦むことなくため息をついていて、かたや俺は困ってしまってわんわんわわんである。
別に心配なわけじゃないんだからね。仕事してほしいだけなんだからね。
「雪丸」
「…………」
「おーい」
「…………」
「……首のうしろ焼けっぞ」
「日焼けどめ塗ったから大丈夫」
「女子かよ。つうか聞こえてんならお返事なさい」
「こないだ紫外線はやばいっつったのおーちゃんじゃん。何?」
「何すねてんだよ」
「すねてないもん」
「もんって言うな。男の子なんだから」
「そうなんだよね」
「あ?」
「男の子なんだよね」
「え……何が」
「ランドリーの君」
「…………」
ばらは二番花をつけはじめていた。
作品名:うそみたいにきれいだ 作家名:むくお