laughingstockー9-4ー
「ルイス、行こう・・・」
「構わないのか?」
今、状況から考えても時間は少ない。彼らに構う時間はまったく無かった。ただ此処に来ているということは、選ばれたということだっただけで、リーフに出来ることは今は何もなかった。
ルイスに頷いて見せて、走る。
まずはウサギを探さなければならない。
彼らを助けることで本末転倒になるわけにはいかなかった。
「こっちだ」
ルイスの後に続く。
性急に足を進める彼に、時間はもうあまりないと知る。リーフは彼と引き離されないように一定の距離を保ちながら進む。周囲はいつのまにか静まり返り、悲鳴、啜り泣きは聞こえずに静まり返っていた。
たった一つ部屋を通り過ぎただけで別時空のような場所。
なのに風は吹き止まない。誰かが呼んでいるのだろうか。
この世界に風なんて存在しないのに、この空間にだけ吹き続ける風は、涼やかだ。
「ここだ」
ルイスが足を止め、こちらを振り返っていた。彼の背後には周囲だけが暗く、狭い玄室のような場所だった。
リーフの眠る硝子柩が置かれている場所に似ているのかもしれない。
青い光が中心に漏れている。その中心は眩い光に包まれてよく見えない。深い穴のようなものなのかもしれない。
「ここがお前の父の元だ。なんとか間に合ったようだな」
「間に合った?何にだ?」
「再生と統合」
ルイスは青い光に近付き、目を閉じる。そして手をその光に差し込んだ。
途端、ルイスの身体から赤い発光する光を感じた。
それは彼の左腕を包み、煉獄の炎のようだった。
力だと感じた。
それこそがルイスの意志、すべてを司る力であると。
「ルイス・・・!!!!」
「リーフ、選べ。今ならウサギを引き摺りだせる。
会いたいか・・・?ウサギに。
それとも父と会うか・・・・?」
a.「ウサギに会う」
b.「父に会う」
作品名:laughingstockー9-4ー 作家名:三月いち