laughingstockーsheroー
ずっと共に歩んできたウサギは肯定するように自分の首に掛けていた鍵をリーフに渡してきた。その身から離す事はなかったリーフの命。リーフは身体が機能しなくなってもこの鍵さえあれば意思を持って生きていくことができる。
ずっとウサギが護ってきたものだった。
「お前、これ・・・」
これを渡されたという事はウサギリーフとのかかわりを切ると言っているものだった。見上げると、ウサギは赤い眼でリーフを促している。
早く行けと。同時に伝えられる追っ手の存在。
リーフは頷いてシェロの歩いていった方向へ向かう。
ウサギはそれを見届けて、向こう側へ戻ろうと決めた。
この世界での役目は終わったのだ。
こうなって良かったのだと心から思う。
自分達の存在に縛られて生きるのはあのpielloにはさせたくないと「彼」の心の断片が内部から語りかける。
共有した思い出も全て忘れて生きていけば良いと。
心をざわめつかせる寂しさは彼以外のpielloに満たしてもらえと咎める声が理性を持って響く。
今から結合が始まる。
それを何処か安らかな気持ちでウサギは待つ。
フードを深く被り、巡礼者は途切れる事無い道を歩んでいく。
ある時代、二人組の巡礼者が街や村で見掛けられた。片割れは美しい銀の髪を持つ青年であったため誰もの視線を集めたが、彼はもう一人の側を離れることはなかった。ただ彼は病回復のための巡礼だろうと密やかに噂され、人々が近付くことはなかった。
彼らの行方はやがて風の噂と消えた。
作品名:laughingstockーsheroー 作家名:三月いち