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連続実験:症例H

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第二話:トイレのタイムサービス(細田)


 
 次は僕の番かぁ。
 皆さん、はじめまして。
 僕は細田友晴といいます。二年C組に在籍しているんだ。よろしくね。
 いやぁ、緊張するなぁ。でも、せっかく呼んでもらったんだから、ちゃんと話さないとね。
 
 それにしても奇遇だな。実は、僕が用意してきたのも、臭いにまつわる話なんだ。
 といっても、もちろん香水は関係ないよ。僕は、ああいうおしゃれなものはよくわからないし……。
 僕が話すのは、それよりずっと身近な臭いの話。それも、誰でも日常的に嗅いでいる臭いのことなんだ。
 
 ところで坂上君。ちょっと答えにくいことを聞くんだけどさ。
 君は、一日に何回学校のトイレを利用するかな?
 ……うん、そうだよね。いちいち数えてるわけないよね。変なことを聞いてごめんよ。
 そうなんだよね。普通は、トイレなんて行きたくなったら行くものだよね。
 でも、僕はトイレが大好きでね。特に用がなくても、休み時間には必ずトイレの個室で過ごすんだ。一日に平均で十回くらいは入っていると思うよ。
 
 ……やっぱり、変かな? 正直に言ってくれていいんだよ。この話をすると、大抵の人は僕を白い目で見るんだ。
 そうかい? ありがとう、坂上君。気を遣ってくれているだけでも嬉しいよ。
 今日は来てよかったなぁ。だって、君みたいな人に出会えたんだからね。
 
 あっ、そうだよね!ごめんごめん、話を続けようか。
 それでさ、普通の人は、トイレに入る回数なんて、日によってまちまちでしょう? 排泄のリズムなんて、コントロールできるものじゃないものね。ましてや、決まった間隔で決まった時間に決まった個室で用を足すなんてさ、考えられないよ。 
 でも、いたんだよ、そういう人が。
 
 僕がその人を知ったのは、入学したての頃だった。
 僕はその日も、休み時間になるとトイレに駆け込んだんだ。
 その時、ちょうど個室から出てきた人がいた。
 おかしいな、と思ったのは、その人が二年生だったからなんだ。
 普通は、自分の教室がある階のトイレを使うものじゃないか。
 いくら生徒数が多いといってもさ、うちの学校は、同じ階に北側と南側の二カ所、トイレがあるんだもの。
 混んでたって、よほどじゃなきゃわざわざ別の階に行ったりしないよね。
 
 でもさ、僕はその時、本当にトイレに行きたくてたまらなかったから。特に気にしないで、彼が出た後の個室に入ったんだ。
 
 ──ある事に気付いたのは、丁度三日後のことだった。
 同じトイレで、またばったりその人にでくわしたんだ。
 僕は別の個室が塞がっていたから、その人が出たばかりの、一番手前の個室に入った。
 
 ところが、その個室は、全然臭いがしなかった。
 男子が個室を使うとしたら、大便をする時だよね? そして、どんな人だって、排泄の直後には必ず多少は臭いが残るものじゃないか。
 自分じゃあんまり感じないけどさ。他の人がした直後に入ったら、やっぱり臭うよね。
 
 だから僕はびっくりしたんだよ。大便をしても、まったく臭わない人がいるなんてさ。
 女の子なら、羨ましいって思うかもね。
 僕も、その人と是非友達になりたいと思ったんだ。そして、臭わないことに秘密があるなら、なんとしてでも教えてもらいたかった。
 
 坂上君だってさ、そんな方法があるなら、知りたいよね?
 臭わない方がいいに決まってるよ。
 
 ところでさ、実はその人、坂上君もよく知ってる人なんだよ。誰だと思う?
 実は、日野さんなんだ。
 
 僕は日野さんのクラスを知らなかったから、トイレで待ち伏せて声をかけることにした。
 でも、いざとなると緊張しちゃって。なかなか、声がかけられなかった。
 そのおかげで気付いたことがあったんだけどね。
 日野さんは、三日おきに、二時間目と三時間目の間の休み時間になると、三階北側のトイレの、一番手前の個室を使ってたんだよ。
 
 それから僕は思い切って彼に声をかけて、その事を指摘してみた。
 決まった時間に決まったトイレに入るから、臭わないんですか?ってね。
 
 でもさ、日野さんはきょとんとしてたよ。彼には自覚がなかったんだ。
 わざわざ三階に来てたのも、一年生の知り合いに用があったからだって言うんだよ。
 
 そこで僕はやっと勘違いに気付いたんだ。
 臭わなかったのは、日野さんだからじゃない。トイレそのものに原因があるんだ、って。
 
 それで、調べてみたらね。
 誰でも、二時間目と三時間目の間に、三階の北側の男子トイレの一番手前の個室で用を足せば臭わない、って事がわかったんだよ。
 
 すごいことだと思わない? 消臭機能付きのトイレなんて画期的だよ。特別変わったところのない、普通のトイレなのにさ。
 僕は早速、毎日その時間にその個室を使ったんだ。自分じゃあんまり実感できないもんだけど、やっぱり何かが違うんだよね。快適だった。
 残念なのは、二時間目と三時間目の間しか効力がないことだよ。でも、その時間限定だからこそお得な感じがするんだろうね。スーパーのタイムサービスみたいにさ。
 
 だけどね。何度も使っているうちに、気になってきちゃったんだよね。なんであの時間、あの個室だけ、臭わないんだろう?ってさ。
 むしろ、それまで気にならなかった方が不思議なくらいだよ。
 
 原因は、見当がついていたんだけどね。
 実は僕、霊感があるんだ。今、この部屋にもさ、霊が集まってきている気配がするんだよ。
 本当だよ。怖がらせようってつもりじゃないよ。怖い話をしたら、霊が寄って来るんだよ。
 このまま話を続けたらどんな事が起こるのか、僕は正直いうと怖いんだ。
 
 ……それで、例の個室だけどね。普段はなんともないのに、その時間帯だけ、霊の気配がするんだよ。
 それまでは排泄に集中していたから、特に気にしていなかったんだ。でも、気になり出したら止まらなくてさ。
 臭わないのは、その霊のおかげだと思って、どうやって霊が臭いを消しているのか調べることにしたんだよ。
 
 僕は早速、いつもの時間に例の個室に入った。そして、ズボンと下着を下ろして、ふんばっているふりをしながら、霊の気配を探ってみたんだ。
 
 ……するとね。生ぬるい空気が、僕のお尻を撫でたのさ。
 僕は思わず固まっちゃったよ。
 霊の気配は、僕が無防備にお尻を向けている、便器の中から漂っていたんだ。
 
 どうして今までこれに気付かなかったんだろう?
 
 僕は少し震えながら、恐る恐る便器を覗き込んだんだ。
 そしたら、目が合った。
 何と?
 排水口から首だけ突き出して、大きく口を開けている青白い顔の男と、だよ
 
「うわぁぁぁぁぁ!?」
 
 もちろん慌ててズボンを穿き直して逃げ出したさ。
 あれ以来あの個室には行ってないよ。
 あんな得体の知れないものに大事な場所を向けるなんて、気持ち悪いものね。まあ、坂上君が入ってみたいって言うなら、止めないけどさ。
 だってあれはきっと臭いを食べているだけで、他に害があるわけじゃないみたいだから。
 
 僕の話はこんなところかな。他の人の話も楽しみだよ。
作品名:連続実験:症例H 作家名:_ 消