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オレたちのバレンタインデー

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9 確信―Teacher.A


 あれから何日かは、何事もなく過ぎた。
 問題児は問題児らしくない態度で真面目に誠実に日々の授業を受けている。Oとは仲直りしたようだが、ちょっかいを出すこともなくなった。そうあってほしかったはずなのに、いざそうなるとなんだか気味が悪い。おかしい。おかしすぎる。
 かえって生徒会本部疑惑が深まった。私に気付かれたから、懸命に取り繕おうとしているのではないか。そう思えてならない。
 ――そして、今日は遂にバレンタインデー。この日のために、協力的な教師何人かにこれまで以上の注意を呼びかけておいた。怪しい言動はつぶさに観察すること。もし本部勢力らしき者が生徒に危害を加えそうになったら、捕まえて厳しく問い詰めること。あんな大仰なことを書いてもまだまだ子どもだ、ボロを出すに違いない。
 準備は万端。本部のやつらめ、後悔するがいい。生徒会の息の根を止めてやる!
「ではこの問題を、O、答えてくれ」
 英語問題集を開いて内職しているOを指す。慌てた様子もなく、Oは下に重ねてあった数学のノートを取り出す。
「83±41iです」
 無駄のない答え。OにはIに似通ったものがある。数学の驚異的な能力といい、物静かな雰囲気といい。もっとも、Oは秀才タイプだし、Iのように陰気であるがゆえの静かさではなく、冷静沈着な性格のために落ち着いた空気を纏っているのである。
 最近、なぜか私は、この二人の間になんらかの繋がりがあるのではないかと気になる。別に彼らが友人であろうと兄弟であろうと、そんなことは全ての生徒を平等に扱わねばならない教師には関係がないはずなのだが、どうしてか授業でIとOを見る度に考えてしまう。あるまじきことだ。心を律しなければ。
 チャイムが鳴った。週番の号令。いつものようにざわざわと騒ぎ始める生徒。
 教室内によく目を凝らしてから退出しようとすると、問題児とOがひそひそ話しているのが目についた。互いに耳打ちしている。明らかに怪しい。そんなことをしないと話せない内容なのか。
 片付けるフリをしながらそちらに神経を集中させた。問題児のざらざらした声がかろうじて聞き取れる。
「……で、どうするよO。どうやって例の計画を……」