ありふれた
毎日が慌ただしく過ぎていく。
何も考える事も出来ずに、唯、時間だけが過ぎて行く。
それが良いのかも知れない。
自分で言うのも難だが精神的に弱い僕はそれ
位が丁度良いのかも知れない。
娘の寝ているうちに家を出て、娘が寝た頃に家の鍵を開ける。
それ位が良いのかも知れない。
何時もの様に仕事を終え、車を走らせていた。
疲れきって何も考える事もなく、唯、アクセルを踏んでいた。
今日も忙しく何となく一日が過ぎた。
そんなことをふと考えた時に信号に捕まってしまった。
何となく気持ちが落ちてしまう。
早く帰りたいのに。
そんな気持ちで窓の外を見たら、綺麗な月が出ていた。
此の道でこんな月を眺める。
何とも言えない気持ちが僕の頭を一杯にしてしまった。
Road to the Moon.
海に浮かぶ一筋の光は月への道。
一度だけ。
たった一度だけ。
そんな月への道を見た。
今迄生きて来て一番幸せだった時間。
アナタと過ごした時間。
ありふれた時間だったのかもしれないけど・・・
僕にとっては掛け替えの無い時間。
絢。
だから、忙しい方がいいんだ。
何も思い出さずに・・・何も考えずに済むのだから。
後ろの方からクラクションが聴こえる。
前を見ると信号は青に変わっていた。
再び、僕はアクセルを踏む。