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スイソウ

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スイソウ
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魚はいい。
水の中ですいすいと泳ぐさまを見ていると、とても癒される。
僕が感じている煩わしい毎日を忘れさせてくれる。

大きな水槽もいい。
海の中をのぞき見ているような気がして、とても落ち着く。

僕は自分の部屋に大きな水槽を置いている。
その中では小さな魚がたくさん泳いでいて、それを僕は水槽のガラス越しに指でなぞる。
僕の指にびっくりして、小さな魚たちは散り散りになる。それもまた、面白い。

毎日に退屈していた。
死んでしまってもいいと思っていた。
だから、部屋に水槽を置いていた。

ある日、僕は気まぐれにその大きな水槽に、大きな魚を入れた。
小さい魚ばかりの水槽の中がとても賑やかになった。僕は嬉しかった。

次の日の朝になると、小さな魚が一匹減っていた。
僕は気のせいだと思って、放っておいた。

水槽の中は賑やかだった。

次の日の朝になると、小さな魚が一匹残らずいなくなっていた。
僕は小さな魚たちが何処に行ったのか知っていた。


小さな魚がいなくなり、水槽の中は大きな魚だけが泳いでいた。
僕は大きな魚に餌をあげることにした。


ボクはペットショップからコオロギを買ってきて、それを水槽に放り込んだ。
水の中にぶくぶく沈んでいくコオロギを、大きい魚はばくりと平らげた。

その日から僕は頻繁に大きな魚に餌をあげた。

僕の家の庭にいたトカゲをあげた。
僕の家の前で死んでいたスズメをあげた。
僕の家の中で罠にかかって息絶えていたネズミをあげた。

水の中にぶくぶく沈んでいく餌たちを、大きい魚はばくりと平らげた。
大きな魚はどんどん大きくなっていく。

やがてこの魚が、この水槽に入りきらないくらいに大きくなった時、
この大きな魚に僕をあげたら、こいつは僕を食べてくれるんだろうか。

今日も僕は魚に餌をあげる。
明日は何を与えようか。

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水槽/水葬
作品名:スイソウ 作家名:くらは