ボクラノ 1
豊かな自然に恵まれ、道端に花々は咲き誇り、全てが自然のままの、ありのままの街。
観光地としても有名で、少し歩けば、レストランや娯楽用の土地などがある。
そんな恵まれた土地に住む、魔術師と呼ばれた二人の少年がいる。
人知を超えた、並外れた破壊力。
しかし彼らは、何かを壊すため、そして何かを滅する為にその力を使うのを嫌っていた。
仮に彼らが、魔法を使ってこの街を荒らしたというのなら、この街の人々は彼らと親交を持つことなどなかっただろう。
彼らは、自分たちの能力を使って、街の緑たちに活気を与えていた。
そのため、住人の中には彼らを緑の神様だ、と言う人もいる。
彼らは毎朝、早起きをして街を散歩していた。
魔術師の彼らを一目見ようと、早起きする住人はもちろん、他の街や村からも、その少年見たさに来ている人もいる。
そうして、稀なことだが、テレビ局などから取材があることも少なくはないが、多くもない。
話は変わって、100年以上前から語り継がれている話を教えよう。
その昔、神は人間を作った。
その人間たちは、神が思った以上に繁栄し、豊かな国々を自分たちで作り上げていった。
しかし、豊か故に、殺し合いが発生しはじめた。
それを見た神は、5人の神の子…つまりは天使を作り出した。
神は天使に、罪を犯した罪人を、厳しく罰せよと命令した。
その命令を受けた5人の天使たちは、人間の「赤ん坊」として人間の母親のお腹の中に入り、やがて成長して神直属に受けた命令を実行する。
この話がどこから語り継がれてきたのかは、誰も知る者はいない。
一番最初に語った者が既に死しているのか、など、研究は続けられているが、正に雲をつかむような話だった。
そうして、ルスフェリアに住む二人の少年も、その中の二人ではないかと考えている政府が、研究所同行を望んでいるが、その少年は、そんなもの身に覚えはないと言って、それを頑なに拒んでいた。
身に覚えがないのも理由のひとつだが、この街と、この自然を守るために、自分たちは存在しているのだと言っていた。
そんな彼らの望む幸せな日常は、刻々と壊れ始めていたことも知らず、彼らは今朝も家を出た。