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てるてるぼうず

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「お姉ちゃん」
小さな男の子がね、学校から帰っている女の子に声をかけたの。
女の子はその男の子の目線に合わせるように座ったわ。優しいのね。
「何? どうしたの?」
そう聞くとね、男の子は無邪気な笑顔でこう聞いたの。
「明日は晴れる?」
「……明日は……晴れると思うわよ。天気予報で明日は晴れだって言っていたし」
女の子は優しく笑うと、男の子はとっても嬉しそうに声を弾ませたわ。
「本当!? じゃあ、晴れていたらお礼、あげるね!」
そう言って男の子はすぐに人ごみにまぎれてしまったわ。
女の子は苦笑いをして男の子が去るのを見守ったわ。
確かにそうよね。あのぐらいの男の子のお礼なんて、石ころとか、よくて駄菓子だもの。
でもね、その子は違ったの。

そして次の日、男の子は同じ場所で女の子を待ってたの。
その日は雲ひとつない快晴で、男の子はとても嬉しそうだったわ。
そして、あの女の子が同じ道を通って帰ってきたの。
「お姉ちゃん」
男の子は前の日と同じように女の子に声をかけたの。
「あ、こんにちは。晴れてよかったね」
座って男の子の目線にあわせて、にっこり笑いかけたわ。
すると、男の子は、はい、と手に持っていた袋を女の子の前に差し出したの。
女の子は思わず受け取ると、男の子は、じゃあね、と言ってまた人ごみにまぎれてしまったの。
女の子は男の子が見えなくなるまで見送ると、貰った袋の中を見て愕然としたの。

……何が入ってたって?
別におぞましい物とかではないわ。
お金よ。お札や小銭がたっくさん詰まっていたの!

おかしいと思ったのでしょうね、女の子は男の子の後を追って男の子を探したの。
でも、見つからなかったわ。
そして、暗くなってきたから仕方なく女の子は家に帰ることにしたの。
明日あの場所で会えばいいと思ったのでしょうね。
けれど、男の子は女の子の家の前の道に立っていたのよ。
女の子は男の子を見つけると、走って声をかけたの。
「良かった……っ こんな大金、いらないわ。いいから持って帰ってくれる? 御礼はお菓子とかでいいから……」
女の子は男の子に持たせようとするのに男の子はそんなことお構いなしに女の子に聞いてきたの。
「お姉ちゃん、明日は晴れる?」
「え? あ、明日は……晴れるらしいわよ?」
思わず答えてしまったのでしょうね。持たせようとする手を止めてしまったの。
するとね、男の子は満面の笑みを浮かべて、
「本当!? じゃあ、晴れていたらお礼、あげるね!」
一字一句前の日に言った言葉と違えずに言って、男の子は袋を持たずに走り去ってしまったの。
女の子は家の前で呆然としてしまっていたわ。

次の日、晴れだといっていた天気は雨だったの。
女の子は傘をさして、学校へ向かっていたわ。
すると、目の前に傘をさしていないあの男の子がいたの。
袋の事もあるのでしょうけど、びしょ濡れで突っ立っている男の子に近付いて、傘を差してあげたの。
「どうしたの!? びしょ濡れじゃない……。傘は?」
そう聞いても男の子は女の子のほうを見ないの。
不思議に思ったのか女の子は男の子の顔を覗き込んだのよ。
その顔はとても怒っていたわ。
「……雨、降った」
男の子はそう言うと、傘を差した女の子の首を締めたの。
少しずつ少しずつ力を入れて……ね?

―――いきなりだけどさ。
昔の人はてるてる坊主が天気を晴れにしたら金や食べ物を備えて、雨が降ったら首を切っていたそうよ。

ねえ、女の子はその後、どうなったと思う?
それはね――――――
作品名:てるてるぼうず 作家名:佐倉みね