君ト描ク青空ナ未来 --完結--
第一部 Be filled with the dark and encounter the light
1
高校の入学式の前日、自宅に鳴り響いた、一本の電話。
この日から、全てが変わってしまった。
『いやよ、どうして私たちがあの子を引き取らなきゃいけないの?』
『仕方ないだろ、うちが引き取るのが一番いいと言われたら断れない』
『あんな子、うちの家名が穢れるわ』
その電話は、母の死を告げる電話。
原因は、交通事故。
別れは、突然。
何の前触れもなく訪れる。
気づいたころからずっと母さんに育てられた。
父さんがいない理由は知らない。
それでも母は幸せそうだったから、いつの間にかそれで十分だと思ってた。
親戚関係も何もない、母子家庭。
状況を把握するのには、小学校高学年にもなれば十分。
俗に言う、『駆け落ち夫婦』なんだと、なんとなく理解していった。
豊かじゃなかった。
欲しいものはいつも我慢していた気がしたし、家も狭かった。
それでも・・・ずっと、幸せだった。
電話がかかってきたあとも、ドアを見つめ続けた。
『ただいま、空流。遅くなったわ』
そう言って、母さんが帰ってくるって・・・。
母さんがもういないなんて・・・信じられなかった。
葬儀は、アパートの大家さん夫婦がとりしきってくれて・・・僕は何も覚えてない。
これからどうなるんだろうとか、そんなことを考えるんじゃなくて、ずっと、頭にもやがかかって、何も考えられなかった。
「お前が、空流か?」
声をかけてきたのは、中年の太った男の人。
葬儀用の黒いスーツを着ているけど、誰だかわからない。
問いかけに、一回、うなずく。
「私たちがお前を引き取ることになった。こっちに来なさい」
言われるがままに、奥の和室へと入る。
そこには、何人か葬儀用の服を着た、大人たち。
「この子が、お前の妹の子どもだ」
引き合わされたのは、母よりも大分年上の女性。
つまりこの人は、母さんの姉。
「そうだ。」
「いやよ、どうして私たちがあんな子を引き取らなきゃいけないの?」
「仕方ないだろう、うちが引き取るのが一番いいと言われたら断れない」
「こんな子がいると、うちの家名が穢れるわ」
「お前の妹の子だ、お前が責任もって面倒を見ろよ」
「なんで私が・・。あの子もよくもまあこんな恥さらしの跡を残して死んでくれたわ」
母さんが恥さらし・・・?
僕は恥さらしの跡・・・?
「まあいい、とりあえずこんなところは早く離れるぞ」
怒る気力も泣く気力も、何もなかった。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-