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和(ちか)
和(ちか)
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My home1

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My home Ⅲ


少し前に出来たばかりの真新しいショッピングモールの中をぶらぶらと歩いていると指先がするりと握った手の中に滑り込んできて、ゆるく繋がれた。驚いて手を上に持ち上げようとすると、握り締める手にグっと力が入る。そしてその指が悪戯に指の股をカリカリと引っかく。
「フランシスさん、くすぐったいです」
「嫌だった?」
「そんなことないですけど……」
「そっか、良かった」
嬉しそうににっこりと笑われて、なんとなく後に続くはずだった抗議を飲み込んだ。ずるい、私はフランシスさんの笑顔に弱いのに。と言うか実際はフランシスさんのすることだったら何にでも弱いだけの気もするが、それは気づかなかったことにしておく。
近頃やけに頻繁に手やなんかを触ってくるのが気になるが、もしかすると私以外には常にこんな態度と言う可能性も十分有り得る。フランシスさんはスキンシップが激しいから。
そんなことを考えていたとき、ふと視線を感じて振り返った。そうしたら繋いでいる手を見られていた。よく考えてみたら一見すると私達に血の繋がりなんていうものは無いように見えるわけで、そして実際無いわけで。
「あの、凄く見られてて恥ずかしいです……!」
「そう?」
フランシスさんはきっと普段見られなれているから耐性が付いているらしく、特に気にした風も無くのんびりと辺りを見回した。その途中でこちらを見ていた二人連れの女性と眼が合いそうになっていたが、女性達はサっと目を逸らしていた。
「嫌なわけではないんですけど、目立ってしまうので……」
「お兄さんは繋いでたいんだけどなー。 菊ちゃんが嫌じゃないならこのまま繋いでようよ。
 別に何も疚しいことなんて無いんだしさ」
確かにそう言われてみれば気は持ちよう、誰がなんと言おうと今の自分達は兄弟なのだ。人の視線なんてものは気にし始めたら負けだ。そう必死で自分を納得させて渋々頷いてはみたものの、やはり視線を感じて落ち着かず逃げ込むように近くのお店に飛び込んだ。
「あ、あのベルトいいなぁ」
「見ていきます?」
 私、この辺りに居ますので」
店内をうろちょろしていると一枚のシャツが目に付いたが、女の人向けに見えなくも無い。でもデザインが可愛いし買ってしまおうか、どうしようかと悩んでいる内にフランシスさんがベルトを持って帰ってきた。その途中で私の目線の先にある物に気づいたようで、シャツを立ち止まって手にとる。
「このシャツ可愛いね、欲しいの?」
 買ってあげるよ、折角一緒に来たんだし」
「えっ、そんなの悪いですよ!」
そんなに歳が違うわけでもないのにいい歳をして物を買ってもらうなんて恥ずかしいし申し訳ない。必死で断っているのに、フランシスさんは意気揚々とシャツをレジに持って行ってしまった。
「買ってきたから着替えちゃいなよ」
「いっ、いまですか?」
「うん、試着室あるし。
 お兄さんに着て見せてよ」
そう言ってにこにこしながら試着室のカーテンを開けて待っているので、仕方なく中に入る。実は今着ているシャツと形はさほど変わらないのに気づいているんだろうか。見せてみて「あんまり変わらないね」とか言われたら泣いてしまうかもしれない。
「着替えたー?」
「ちょっと待ってください」
カーテンをちょんちょん、と突付かれてはっと我に返った。早く着替えて出ないとフランシスさんを待たせてしまう。
「着替えましたので、今でま」
慌てて着替えてカーテンを開けようとした手が触れる前にカーテンが開いた。
「ねぇねぇ、このズボン菊ちゃんに似合うと思うんだけど、どうかな?」
「えぇっ?」
「ついでにズボンもこれに変えちゃいなよ。
 あ、駄目って言ってもお兄さんもう買っちゃったからね!」
「え、えぇ ……もう……わかりました。
 でも、これ以上は買っちゃ駄目ですからね!」
キッと目を吊り上げて言ってみると不満そうにしつつも渋々ながらと言う様子で頷いてくれたが、この感じは目を離したらまた買ってくる気がする。目を離した隙に高い物を買ってきたりしないようにちゃんと見張っておかなければ。
「じゃあ着替えますので……」
じたばたとよろめきながらも急いでズボンを穿き替える。急がないとあの人はこの隙に今度はアクセサリーとか買ってきたりしそうだ。
「はぁ……」
ズボンを履き替え終わって鏡を見てみると映ってるのって本当に私なの、くらいの勢いでオシャレ感が全身から溢れ出している。少し丈が短すぎやしないかと言うのが気になったが、シャツとも合っている。
ただオシャレ過ぎると逆に恥ずかしくなってきてしまうのは、やはり普段殆どオシャレをしないからなんだろうか。絶対に着飾っている姿を知り合いに見られたくないと言うこの複雑な気持ちは、きっとオシャレをしない人間にしか分からないだろう。
「菊ちゃん、どうー?」
「あ、終わりました。
 こんな感じですが、どうです、か、ね?」
「良いね! 可愛いよ!」
「あ、有難うございます」
肩を押されてくるくると回され全身を上から下まで隈なく見られた。
フランシスさんに褒められると、はいはい贔屓目贔屓目と言う斜に構えた気持ちとフランシスさんに褒められていると言う嬉しさとが入り混じって複雑な気持ちになる。
と言うか、私は今日一日この格好で歩き回るのか。
恥ずかしいので正直に言うと嫌だが、フランシスさんが満足げに微笑んでいるし服装的には申し分なくお洒落なので仕方がない。
店員さんにまで見られている気がして試着室から出るだけでも一苦労だったが、外に出るとまた手を引かれて歩き出した。
「次はどこに行こうか?」
「あの雑貨屋さんに入ってもいいですか?」
三つ隣にあった雑貨屋を指差す。 軒先には女性らしい丸文字で大きくセール品と書かれた色鮮やかなマフラーが置かれている。
ハート型のネックレスや王冠のついた指輪、そんな女の子が喜びそうな物の海の中から真っ白なアルパカのぬいぐるみがくるんと丸い瞳でこちらを見ていた。
「いいよ、入ろうか」
半ば駆け寄って棚からぬいぐるみを取り、ゆっくり眺めているとフランシスさんが屈んでアルパカの目を覗き込んだ。
「可愛いですね!」
強めに押すとふかふか柔らかく丁度腕に中に納まるサイズで思わず抱きしめたくなるくらい可愛い。
「そうだなぁ……でも見て、お兄さんの方が可愛くない?」
可愛い子ぶって上目遣いで見てくるのをスルーしてアルパカぬいぐるみを上に持ち上げたり頭を撫でたりして楽しんでいると、ぬいぐるみコーナーに飽きたのかフランシスさんがふらりと何処かへ歩いて行った。
本当にこの真っ黒な目と言いちょこんと立った耳と言いやわやわでくたくたの身体と言い、絶妙な可愛さだ。
じっと見詰め合っていると私に買ってほしがっている気すらもしてくるが、高校生の男がぬいぐるみを買うのは世間の目を考えるといただけない。
仕方なく思う存分撫で回して欲求を満たしていると背中をちょんちょんと突付かれた。 振り向くと何時の間にやら持ってきていたフランス国旗と日本国旗のキーホルダーをこちらに差し出す。
「お兄さんと菊ちゃんの国の、お揃いで買わない?」
「はい、まぁ良いですけど……」

作品名:My home1 作家名:和(ちか)