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伝説の……

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Y:yellow――しあわせのいろ


 気づいたら、キスしてた。
 すき、キス、すき。
 頭の中が幸せで弾けそうになる。目の前がくらくらする。周りの風景が一瞬で色づいて見える。世界が祝福しているみたい。
「あの指輪、まだ持ってるか?」
 未だ動けないでいる観客を無視して、舞台は進む。
「うん。もう、ダイヤは残ってないけど」
「いいよ。今度は償いのためじゃなく、ちゃんとしたのを買うから。今は、代わりだ」
 顔を真っ赤にしながらもハル君はそう言って、わたしがスカートのポケットから取り出した指輪を受け取った。それを、一瞬もためらわずにわたしの左手の薬指にはめてくれる。
「ふ、ふつつつ、つかものですが、これからもよろしく!」
「水恐怖症ですが、こちらこそよろしく」
 そして、お互いの気持ちを確かめるように、夢じゃないことを確認するように、もう一度。
 観客はようやく停電が復帰したかのように騒ぎだすのだった。
 こうしてわたしたちは正真正銘の『伝説のバカップル』となって――今に至る。

作品名:伝説の…… 作家名:空創中毒