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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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彼方よりの土産

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三万年程昔・・・


 「ダメだ。衛星を破壊しよう」

アトランティス人、木星方面司令官、イフォス・ナビが重い決断を下した。

木星にある五つの巨大衛星(現在、巨大衛星は四つ)のうち、最大の質量をもつタルトポス。

それを周辺に影響を及ぼさない大きさにまで破壊・粉砕しようというのである。

直径にして月の三倍、木星圏で唯一の人類のコロニー。

そんな貴重な衛星に破壊命令が出されたのには訳があった。


辺境の地でも人類が困らないようにと開発した、動く植物・アラキドが大繁殖し、衛星全体に胞子を撒き散らしたのだ。

 
 それが何故深刻な事態なのか・・・。それはアラキドが出す芳香にあった。

 ジャスミンの様なその匂いの中に、人を惑わす成分が含まれていたのである。

 猫におけるマタタビの比ではない。人類全体がゴロゴロ喜び、死ぬまで働かなくなるのだ。

 たちまち衛星タルトボスは機能マヒし、人々の生活は破綻した。

「アトランティス人は、先に地球からも疫病の蔓延の為、脱出したというのに、今また木星を失うのか・・・。」

 イフォスはため息をついた。

 「破壊! そして我らはシリウスに移る」

 音のない宇宙に、音のない大爆発が起き、アトランティス人は遠くの宇宙へ去って行った。





   こうして・・・・・・・・

 衛星タルトポスが破壊され、三万年がたったある日。

 そのかけらの一つに新しい文明の使者が舞い降りた。

 「はやぶさ」と呼ばれたその探査機は、かっての衛星タルトポスのカケラで、今はイトカワと呼ばれる巨岩から、小さな塵・一粒をカプセルに入れて地球に持ち帰った。

 むろんその塵の中に、まだ生きているアラキドの胞子が含まれていることなど、知る由もなかった。
 

  ゴロゴロゴロ・・・・    (おしまい)