雨宿りし 神の声
季節は夏。
服の裏に伝う―――汗は、気持ち悪いことこの上ない。
朝の内は風もあったが、昼にはすっかり凪いでいた。
急がねば、焦れる気持ちの一方で、
――― 草いきれがまとわりつく ―――
そのことが足取りを重くさせていた。
少し休憩しても罰は当たるまい。
そう思って近くの木陰に腰かけた時、
――― 雨が降る ―――
見える範囲にある物―――木が、草が、土が、そして、自身が濡れていく。
火照った体は冷え、失いかけた気力も戻って来た。
これなら行けるという思いの前に、
――― 遠くの山から声がする ―――
その一瞬、それは神の声だった。確かに、そう聞こえたのだ。
次の一瞬、私は雨中を歩きだしていた。
夕たちて 雨にやどりし 声を聞く とほくの山の 神なりにけり