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終わりよければ

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「終わりよければ」



俺は、今、コンビニの中にいる。
耳にはイヤホン。携帯オーディオから、お気に入りの曲が繰り返し流れていた。
空調の利いたコンビニで、優雅に雑誌を立ち読みするという、至福の時間を過ごすはずだったのに。
えーと、そう、あれだ。
今日は、俺が定期的に立ち読みしている、週刊誌の発売日なのだ。
それに、ほら、店の外に、のぼりもはためいてるだろ?今週は、お茶を買うと弁当50円引きなんだよ。
更に、ガラスに張ってあるじゃないか。「おかげ様で3周年記念キャンペーン」って。
こういう時は、「店長のおすすめ!」っつって、フライドチキンが安く売られてたりするんだよ。
俺は、しがない一人暮らし。コンビニ弁当だって、最近は馬鹿にしたもんじゃないぜ?


うん、店の中が外から見えないって、問題だよね。


店の中には、若いのと年配の店員二人と、客は俺を含め三人・・・プラス五人。
この五人、何故か揃いの帽子とサングラスをかけ、手袋をはめている。
そして、店内の人間に向かって、銃口を向けていた。

当然、店に入ってきたばかりの俺にも。

とりあえず、これが本物か偽物かってのは、問題じゃない気がするな。
プラモデルだって、改造すれば、十分な威力がありそうだし。防犯カメラは、残骸になって床に転がってるし。
何より、俺は痛いのは嫌いだ。
世の中、ラブ&ピースじゃないか?

何て言うか、まあ、俺はイヤホンから流れる音楽のせいで、周りの声は聞こえないんだが。
とりあえず、皆静かにしている気がするな。
て言うか、静かにしていて欲しいな。

ああ、お前。何やってんだよ。動くなよ。
そうだよ、眼鏡のお前だよ。何だよもう、昼間っからスーツかよ。会社行けよ。
ああ、昼休みってわけか?そりゃあ、災難だったな。

そうそう、そっちのお姉ちゃんも、大人しくしててくれよな。
手に持ったアイスが溶けても、きっと店側は許してくれるさ。
まあ、弁償するって言っても、百円かそこらだろ?
なんちゃらって言う、ブランドの財布持ってんだから、それくらい朝飯前だろ?

おじいちゃん、頼むよ。「耳が遠い」なんてオチはなしだぜ?
何で、ポテトチップの袋なんか持ってんだよ。孫のおやつか?
ああ、やっぱりガサガサいったんだ。サングラスの一人が、袋を戻してやってるよ。
じーちゃん、お礼とかイイから。状況が分ってんのかね?


あっ!!


店員が何かした!!
いや、若いほうじゃなくて、おっちゃんのほう!!店長!?
あっ!!こづかれた!!いててて!!見てるほうが痛ぇ!!

あー、若いのがレジ開けたー。
店長のがんばりがー。

あー、レジの金がー。


って、うわっ!!店員が何か言ってる!!負けじと店長(仮)も!!
ねーちゃんも、スーツも騒ぎ出した!!
静かなのは、じじいと俺だけかよ!!全く、最近の若いもんは!!


おうっ!?
店長(仮)を脅していたサングラスが、銃を振って何か言った。
途端に鎮まる面々。
うーん、騒がなくて良かった。うっかり空気の読めない奴になるところだったぜ。


あっ!!警察来た!!コンビニの周りを取り囲んでる!!
助けてーーー!!たーすーけーてー!!

中から、警察官がわらわら出てきた。

きっと、あれだな。お決まりの、「無駄な抵抗は止めて、出てきなさい」だな。
そう、日本の警察は優秀だからな!!きっと、明日の朝刊一面に、「コンビニ強盗、無事逮捕」のニュースが載るな!!
俺は、「無事解放された人質」として、写真が載ったりしちゃうかもな。

で、あれ?何か、ひっぱられるぞ。
ああ、そっちに行けってか。はいはい、分りましたよ。言う通りにしますよ。
銃口をこっちに向けるなよ。暴発したらどうするんだよ。痛いだろ、俺が。

一か所に集められた俺達。
サングラス達は、銃をいじった後、俺に手渡した。

はい?

そして、帽子とサングラスと手袋を外すと、手をあげて外に出て行った。

はい?





いや、もー、びっくりだね。
あいつら、「自分達は解放された人質です」とか言いやがってさ。
まさに、アカデミー賞ものの演技ってやつじゃねえか?

これが、俺と仲間の出会いってやつだ。
参考になったかい?まさに、「運命の出会い」ってやつだな。
あ、俺がどうやってコンビニを脱出したかを言ってなかったな。
それは、じーさんの・・・おっと、もう時間か。悪いな、続きはまた今度な。

じゃ、素敵な犯罪者ライフを。


終わり
作品名:終わりよければ 作家名:シャオ