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かわいい彼氏

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くるくると、手に持ったシャーペンをまわす。
いつだったかにはやったペンまわしは、いつのまにか私の癖になっていた。
はやっていたときに友達に教えてもらって、はじめてできるようになったときは嬉しかったものだけど、今となってはそんな新鮮さは皆無。
勉強に行き詰まったときに、くるくるとまわすようになってしまった。
ちら、と姿勢正しく問題をすらすらと解いている、私の彼氏を見る。
一緒に勉強しよう、と言ったのに、私は数学、彼は英語。
やることが違うんじゃ、あんまり一緒にやる意味が無い気がするなぁ・・・。
でも、一緒にいることが目的、みたいな部分もあるから、いいのかもしれない。
それに誘ったのは私だから、彼にとっては良い迷惑、なんて可能性がなくもないし。
・・・それは、寂しいけどな。

もう一度問題に視線を向けてみるけど、やっぱり私には意味の無い数字の羅列にしか見えない。
どうやったら解けるか、なんて考えたくもない。
・・・うん。こういうときのために、一緒に勉強するんだよね。


「ねぇ、これってどうやって解くの?」
「あ?んなのしらねぇよ。自分で考えろ」
「意地悪め・・・」


なんて口が悪いんだろう!いや、今に始まった事じゃないんだけど!
しかも即答じゃない。わからないから聞いてるのに・・・。
まあ、大して自分で考えたわけじゃないから、愛の鞭だと思えば・・・、なんて思えるかってのよ。
あー!と声をあげながら机に突っ伏せば、頭上から大きなため息が聞こえた。
そんなため息つかなくてもいいじゃんか、と心のなかでつぶやく。わからないものはわからない。
ずるずると身体を持ち上げて、解答を開こうとすれば、その手をばしん、とたたかれた。


「自分で考えろ。そうじゃなきゃ意味ないだろ」
「わかんないものはわかんないの!」
「じゃあまずは教科書見ろ。解答はそのあと!はい没収!」
「あ!鬼ぃいいい!」


私の手から解答をひったくると、その解答は机の中にしまわれた。
とりたくてもとれなくて、仕方なく私は教科書をとりだす。
言う通りにするのは癪にさわるけど、確かに一理あるし・・・。
ぱらぱらと教科書をめくって、問題の解説が載っているページを探す。
あ、どうしよう。この問題で何をやってるのかすら私わかってない。
それは教科書のどのページを見れば解き方が載っているのかすらわからない、ってことで・・・。
いよいよ絶望したくなってきた。
だから、数学は本当に苦手なんだよ。誰だよ、数学なんてつくったの!
ぱらぱらと教科書をめくっていけば、なんとなくそれらしい問題を発見した。
お、これか?と思って問題文を見れば、少し違う。
このへんのやつだろうか、と見て行くけれど、どれもこれも似たようなやつばっかりで、どれが問題と一緒なのか見当もつかなくなってきた。
ぐるぐると数式が頭の中で踊っていて、頭が痛くなってきた。
ふいに、彼が口を開いた。
?
?
「・・・まだわかんねぇのかよ」
「・・・・・・考えてる」


呆れたような声に、もう考えてるんだか考えてないんだかわからないくせに、強がってそういった。
すると彼はまたため息をついた。
彼の方を向けば、なんとなく顔が赤くなっている気がする。
でもちょうど日が沈んできているし、そのせいかな、なんて思ってスルーした。
その直後、信じられない台詞が彼の口から飛び出した。


「・・・教えてやろうか?」
「え!」
「べっ、別にお前のためじゃないからな!教えるのは自分にもいいことだからなんだからな!あくまで俺は自分のために教えるわけだから決してお前のためじゃない・・・わけ、でも・・・ない・・・けど・・・・」


かあああ、とどんどん顔を赤くなって行って、言葉もどんどん小さくなっていく。
しまいには顔をぷい、と背けてしまう。
私は、自分の顔がどんどん緩んで行くのがわかった。
なんだ、この可愛い生き物は。


「おい!ど、どうすんだよ!」
「はいはい、じゃあ、私のためじゃなくていいから、おしえて?」
「だ、だから、おおおおおまえのためじゃないわけじゃなく、なくて・・・!」
「うん」
「おっ・・・・お前のため・・・に・・・」


もうこれ以上ないってくらいに赤くなってしまった彼が本当にいとおしくて、数学のせいで悪かった機嫌は、すっかりよくなっていた。
素直じゃないなぁ、なんて思いながら笑えば、笑うなばかあ!と彼が言った。
作品名:かわいい彼氏 作家名:ハチ