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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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1唱、新たな唄



シャ、シャ、シャ…
刃を研ぐ音が部屋に響いている。
シャ、シャ、シャ…
「………」
刃を研いでいるのは、赤毛の赤い瞳で、少年だ。
少年が居るのは4つの大陸の1つ、もっとも小さい大陸の最南端に位置する村クローツ。
大陸で一番特殊な鉱石が取れる村だ。
そんな村でも村長の意志により広くすることより“村人の管理に目を配りたい”と言うことでここは広くなく格差のない村だ。
その村の鍛冶屋で少年は生活していた。
「ふぅ…こんな感じかな?」
そう言って立ち上がり、さっきまで作っていた物を持って階段を上る。
階段を上り切り廊下に出てすぐそこの扉をノックする。
「テン、居るか?」
扉の向こうから、少女の声が少しすねた様な声がする。
「いないわけないじゃない…いいわよ、開いてるから入ってきて」
少年はドアを開けて部屋の中に入る。そして、さっき作った物を栗色の髪と瞳のテンに見せて言った。
「ほら、できたぞ」
「ありがとう…相変わらず上手ね…特殊双剣弓作るの…」
と、テンが少し顔を赤らめながら言うが、少年は半ば呆れた声で、
「んなの今更なんなんだよ、大体ここは特殊武器扱ってる鍛冶屋だ…ある程度ちゃんとした物作れなきゃやってけねぇだろ…」
「ま、まぁそうなんだけどね…!」
少年は続ける。
「それにお前もちゃっかり俺の双剣作ってんじゃねーかよ、双剣だけじゃない、槍やら斧やらそう言った接近戦用の武器作るだろ…遠距離型の俺の武器よかずっとすごいっての…」
「え、後衛なめちゃだめよ!と言うかショウだって私の援護にどれだけ助かってるか忘れたわけじゃないでしょ?!」
と、テンが頬を膨らませて、ショウに強く反論する。
「わ、悪かったよ謝るって…」
「もー、しっかりしてよね!」
ショウは笑って誤魔化しながら、また下に行く、テンはそれに納得いなかないような顔で口を尖らせて付いていく。
テンは階段を下りてすぐの左の扉を開け台所のある部屋に入る。
ショウはさっきまで使っていた道具などを片づけ、外に出る。
外はまだ薄暗い、時刻は5時20分を回った頃。
仕事をする人たちはもうすでに外を出歩いている。
一旦伸びをしたショウは、いつも通り買い出しに行く。
途中の道でショウは後ろから声を掛けられた。
「あら、ショウ今日はちょっと早いのね。」
「カミアねぇさんか…」
ほっとしたようにショウが言う。
「何?私じゃ何か悪いわけ?」
「いーや?別にー?」
「何よぉ…テンちゃんに言いつけるぞ?」
「それだけはやめてくれ…」
そうやってショウを困らせているのは、クリーム色の髪をしたショウ達がこの村に来てから面倒を見ている姉のような存在である。
ショウ達は余所から来た孤児である。
鍛冶屋を営むという条件の下、この村に住まう事を許してもらったのである。
村長自身、まさかここまでやってくれるとは、思っていなかったのは秘密の話である。
カミアと別れた後、ショウは食材店に顔を出して食材を選び出した。
ショウは食材を買って家に帰ろうとする時、今度は後ろから背中を叩かれた。
「?!」
「よぉショウ!」
威勢のいい声を出すのは体格のいいおじさんだ。
「バ、バルトさん…いつもいつも痛いんだけど…」
とショウが肩を落としながら睨んで言うと、バルトは大口で笑いながら言う。
「嘘こけぇ、おめぇ魔物と戦う時あんだけ怪我してるのによく言うぜ!」
「はいはい…俺は行くからな…」
とショウがサッサとその場を去ろうとするが、バルトが何かを思い出したように引き止めた。
「おぉそうだ!おめぇこのあと時間あるか?」
「ん?テンの朝飯食ったら時間あるけど何かあった?」
とショウが少し面倒臭そうに聞く。
「それがよー、おめぇも聞いてると思うが、最近村の裏手の洞窟で普段見ない魔物を見るようになったんだ」
「あぁ、裏手の洞窟なら何度か討伐に当てられて行ったり、武器の材料取りに行ったりするから、
 あそこの魔物は全部把握してるけど、聞いた話だと出るはずのないインセクト(怪虫型)の魔物らしいな?」
思い出すような仕草をしながら言うと、バルトが驚いたよう表情を浮かべ、
「お前、もうそこまで情報を得てやがるのか…」
「鍛冶屋だから武器の修理とか頼みに来る奴らが居るからな、それくらい知ってて当たり前だよ」
ため息交じりに言う、ショウが改めてどうしたのか聞くと、
「村長が討伐に向かってほしい、って言ってたぜ」
「ん?他の奴らは?俺らまで討伐依頼自体が回ってくるなんて珍しい…」
「どうも奥まで行った討伐隊が壊滅状態らしいんだ」
「ふーん…で、奥の手の俺とテンが…、ってわけか」
「あぁそんな感じだ、まぁ俺もいるがな」
ショウが目を見開いてバルトを見る。
「な、何だよ!」
「ぁ、いや、バルトさんと組むのか…って…」
「悪かったな!それより斧はできてんのか?!」
「あぁ、あの斧なら…」
とショウが言葉を途中で止め、思い返すように右手の人差し指をこめかみに当てる。
「な!どうしたんだよ!はっきり言えよまだなのか、もう終わったのか!」
「ぁーうん、終わってるよ、ただー…1週間前に終わってる事スーッカリ忘れてた…まぁ、あとで取りに来てくれよ、じゃ!」
ショウはさわやかに笑って、背中越しにバルトの叫びを聞きながら家に向かって早足で帰った。
「おいこらてめぇ、忘れてやがったのかぁ!!!あとで取りに行った時に覚えてろよ!」

「ふ〜ん、で?行くって言ったの?」
テンがコップを手に持ったままショウを睨んで聞く。
「まだだけど仕方ねーだろ、あそこで採れる鉱石俺らも結構使ってんだから…」
水を飲み干してコップを置いてショウは答えた。
頭をガリガリ掻いてまたコップに水を注ぐが、少しこぼれる。
軽い喧嘩のような感じになっていたが、テンはため息をついて机に突っ伏した。
「めんどくさーい…」
「わがまま言うなよ…俺だってめんどーだって…」
ショウは立ち上がる。
テンがショウのベストをつかむ。
「なんだよ?まだ何かあるか?」
ショウがもう文句は聞かないぞ、と顔に書いた表情で反応すると、少し思いつめた眼をしてテンが言う。
「ショウが魔物の材料採取のために狩りに行ってる時に客が言ってたんだけどね、最近各地で変な事が起こってるらしいの、多分これもそれの一種だと思うの」
「そうなのか…俺も少しくらいは聞いたっけな…」
「その客が言ってたんだけど、原因やっぱり首都のセントバイトの王様だって…」
ショウは眉間にしわを寄せてため息をついた。
「そろそろ真面目に行動派に移るべきか?」
「私もそう思うわ…Generetor:ジェネレーター((夢を作り出す者達))の行動派として活動すべきね…」
そう言うとベストから手を離した。
ショウは仕事場に行くと、壁に立てかけていた双剣を取る。
左の腰につけているベルトに鞘をとめる。
「おーい、そろそろ準備はできたかー?できたら行くぞー?」
バルトが外から大声で叫んで二人を呼ぶ。
「仕方ないわね…行きましょ…」
とテンが居間から出てきながら言う。
「まぁ、さっさと終わらせて、あとで考えるか」
「うん、そうしましょ…」
そうやって3人は村を出て裏手の洞窟に向かった。