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バス停にて。

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ねみーし、だりーし、何より面倒くさい。
バイト終わって午後四時で、込み始めた食料品コーナーをチューハイ片手にうろついた。
前の職場の上司が、
「帰ってすぐ、冷蔵庫開けてプシュはオッサンくさいよな」
なんて笑い話していたけれど気にしない。
剥げた化粧もベタつく汗も、とっとと帰って流したかった。

お買い上げ416円。
お疲れさま、なんて顔見知りのパートさんに声掛けられて疲れた笑顔で返して出口へ。
チューハイとツマミ入った袋ががさがさ。
店内は、お爺ちゃんおばちゃんお父さん子供派手なねーちゃん、とにかくいろんな人がいて。
私もマジメに化粧したらあぁなれるのか、なんて量品店で買った990円のTシャツ引っ張ってみる。
無理だな。
降り始めた雨に、傘は無いけれどバス停向かって走った。

ここでようやく携帯を取り出す。
メール4件。全部メルマガ。
そして、着信が、一件。ついさっき。
名前を見て、あ、と思った。

前のバイト先、閉店お疲れ様会の飲み会で。
私が勤める前にいた人らしい。
知らない人がいるな、と思ったけれど何故か携帯アドレス交換して何故かご飯を食べに行くようになった。
この着信ももしかしたら。もしかしたら。
電話をかけ直す、驚いたような相手の声。
「バス、乗り過ごしたんで迎えに来てくださいよ」
ついでにご飯も行きましょう、なんて付け足した。

いいよ、と向こう側で笑う彼の声。
じゃあバス停で待ってますと電話を切った直後、バスが滑り込んできた。
もちろん乗らない。
雨のせいか車内は混雑してるみたい。でも、もうどうでもいい。

今度、一緒に服を見に行ってくださいってお願いしてみようか。
もしかしたら、似合うかもしれない。
雑誌の中のモデルさんみたいに。
それは無理でも、これが似合う、と言ってもらった服を買うのもいいのかもしれない。

右手の袋には冷たい缶チューハイ。
あの人はオッサンくさいというのかな。それとも。
雨は変わらず降り続いて、見慣れた車が目の前で止まる。
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作品名:バス停にて。 作家名:ちはや