Pure Love ~君しか見えない~
和人はさっきとは違う信じ難さで、笑みを浮かべている。
「馬鹿ね。これがあなたの実力よ。和人はこれからじゃない」
『……ありがとう』
少し照れながらそう言う和人を、祥子は熱い目で見つめている。和人は静かに、祥子を抱きしめた。素直に嬉しい一歩前進だが、こんな時にもふと思い出す、幸のこと。誰かに触れていたい。人肌が恋しくて、和人は祥子をきつく抱きしめる。そんな和人の思いを諭すように、祥子は和人の唇にキスを重ねた。
「和人……あなたが好きよ」
祥子が言った。思えばお互い、そんなことを言ったことがない。しかし和人は驚くことなく、祥子に静かに微笑みかける。
『僕も好きだよ』
初めてきちんと確かめ合った一言だった。二人はもう一度抱きしめ合った。和人は祥子を抱きしめながら、静かに目を閉じる。胸の高鳴りを覚えていたが、フラッシュバックするように、幸の変わり果てた姿が浮かんだ。
作品名:Pure Love ~君しか見えない~ 作家名:あいる.華音