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Pure Love ~君しか見えない~

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 演奏会が終わると、演奏者の学生たちがロビーまで出てきていた。人の流れに任せて、和人は出入り口へと向かっていく。そんな和人の目に幸の姿が映った。
「和人」
 幸は演奏会をやり遂げた溌剌とした笑顔で、和人に声をかけた。前回、喧嘩のようになってしまったものの、普通に話しかけることが出来たのは、今のこの雰囲気のおかげだろう。
「ありがとう。見に来てくれてたなんて」
『大成功だね。やっぱり前より腕を上げたね』
 和人もいつも通りに話しかける。そんな自然のことに、二人は自然と笑みが零れる。
 そして幸は、和人の言葉に驚いた。
「腕を上げたって……わかるの?」
『うん。お客さんの反応も伝わってきたよ。前は右手が覚束なかったりしてたけど、今日は安心して見てられたよ。さすが音楽学部に入っただけのことはあるね』
「生意気言っちゃって」
 二人は笑った。そんな二人を見つけ、修吾が近づいてきた。
「本当に見に来てくれたんだ。なんだか二人、楽しそうだね」
『お疲れ様でした。お招きありがとうございます』
「いやいや。退屈しなかった?」
 修吾の言葉に、和人は静かに笑って頷く。
「そう、よかった。じゃあ、そろそろ戻らなきゃ。幸も行こう」
「うん。じゃあ、和人。来てくれてありがとう」
 二人は和人に礼を言うと、ロビーから去っていった。

 その夜、修吾は幸の部屋にいた。幸を家まで送ったので、少し寄ったのだ。
「はい、お茶」
「あ、うん。ありがとう……」
 お茶を差し出され、修吾は湯飲みを手に取った。しかし口をつけることなく押し黙る。修吾の胸に、何かの思惑がつかえていた。
「修吾、どうしたの?」
 それを察して、幸が修吾の顔を覗き込む。
「あ、いや……」
「変なの。急に黙っちゃって」
 そう言って笑う幸に、修吾はそっとキスをした。
「……修吾。本当にどうしたの?」
「幸……水上君とは、本当に幼馴染みなだけ?」
 突然の問いかけに、幸は驚いた。
「え?」
「いや。なんか、すごく仲が良いから、ちょっと妬けるっていうか……ああ、もう俺、何言ってんだろ。幸を信じてないわけじゃないのに。格好悪い……」
 そんな修吾の言葉に、幸は赤くなって笑った。
「もう、修吾ってば」
「幸……」
「私と和人は正真正銘、幼馴染みなだけよ。物心つく前から仲は良かったし、和人は両親が共働きで、あんまり友達もいなかったから、いつしか私が母親代わりみたいになってたの。本当にそれだけだよ。愛があるとしたら、家族愛かな」
 幸はそう言った。それは幸の本心である。そんな幸に、修吾も安心して笑う。
「そっか……そうだよな。ごめん、変に勘ぐったりして」
「ううん。不謹慎だけど、ちょっと嬉しい。だって修吾ってば、あんまりやきもち妬いてくれないし」
「そんなことないよ。でも信じてるんだ。俺が幸を好きなように、幸も俺が好きだってね。そうでも思ってないと、やってられないよ。どんどん忙しくなってきて、毎日一緒にいられるわけじゃないしさ……」
 修吾の言葉が、幸は素直に嬉しかった。二人はもう一度キスをした。