式部の噂
プロローグ
父さんはとにかく私をかっこいい女に育てたがった。
母談によると、私がまだ父を父と認識する前からおかしな教育をほどこしていたらしい。
…芸術家ってなんだか変な血が多いきがする。
もちろん父や私含め。
私は父の教え通り男を抱き(抱かれるのではなく。)まくり、愛しまくり、好きな食べ物を食べまくり、運動をしまくり、仕事をしまくり、おしゃれをしまくるような女になった。
基本的に怖いものはなかった。苦手なことははっきり言えた。
…ただ、本当は人間という生き物に興味深々なのにそれが周りに全く気付いてもらえないことだけは残念に思っていた。
私は他人の意見と自分の意見に正直な態度をとっているだけで、他人に興味がないってわけではない。
だからちょくちょく、
「舞和泉さんは他人に興味がないからそんなに強いんですよ。」
なんて言われたりするたびにがっかりしていた。
…あぁもう君なんもわかってないよ…。
と。
まぁそんなにきにしてはいないのだけれど。
というか今にしてみるとそんな呑気な態度が周囲の勘違いを生んだんだと思う。
…そんなこんなでかっこいい女街道まっしぐらと思われた私だが…。
そこで思わぬ邪魔が入った。
子供が出来たのだ。
…もちろん子供を生んだらきっと物凄くかっこよくなれることは知っていた。
私は多分世界一幸せで、世界一子供を愛す母になることも。
…なのに私は苛々していた。
ちょうどその時30度めの海外に飛ぶ準備をしていたのだ。
そこでとにかく悟ってしまった。
…女は不公平だ。
同じことしても女だけ子供ができるなんて。
どんなにかっこよくても所詮男には勝てまい。…と。
もちろん堕ろす気は毛頭なかったけれど。
…そして私は決意した。
この子を、例え性別がなんであろうと、世界一かっこいい人間に育ててやる。
と。
…私以上の。
この物語りはそんな我最愛の娘、式部の話である。