神田さん
昨日母さんに聞いたんだ。
なんか知らないけどむかーしから同じ顔してるんだって。
ばあちゃんがぼくらくらいの頃にも今と同じ顔だったんだよ。
え?
そっ…そりゃ確かにぼくらより小さいけどさ…。
でも本当だよ。だって小学校にも通ってないじゃんか。
僕だっててっきりよっちゃんと同い年くらいだと思ってたけどさ。
でもほんとなんだもん。
神田さんのね、いっつも着てるあの紅い着物ね、神さんからの誕生日プレゼントなんだって。
よっちゃんも神さんからほしいなーとか言ってたよ。
よっちゃんが昨日神田さんに聞いたんだ。
嘘だと思うなら今度神田さんに聞いてごらーんっ
僕は会社の屋上で神田さんのことを思い出していた。
…多分さっきかかってきた妹、よっちゃんの結婚報告のせいだ。
親族のニュースってなぜだか昔のことを思い出させる。
…え?
神田さんは今もいるかって?
…当たり前じゃないか。神さんの子供なんだもの。
不思議?…そうか、不思議なんだよな。
でもさ、ずーっとずーっと昔からあるものってさ、外から見るとなんか変でも…中にいると別にどうってことなかったりするんだよ。
だから神田さんはいつまでも子供のままなんだ。
でもあそこに住んでる彼らはなーんにも気にしないのさ。
きっと今頃も
「よっちゃんが結婚するんだって!知ってた?」
なんて神田さんに話してると思うよ。
…多分100年後も。