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コヒノヤマイニイタルヤマイ。

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 自覚したときには、もう手遅れだった。
 かと言って、どこまで引き返せば良いのかも判らず、僕はただ、いつの間にか育っていたこの気持ちを持て余しがちに抱えたまま途方に暮れるばかり。
 手帳を見ても、携帯電話のスケジュールを見ても、何も記憶されていなくて。電話やメールの発着信を確認してもさっぱり見当がつかない。
 本当に、ただ本当に、気がつけば自分でも説明も、理解も、把握も不可能な感情が僕の中を埋め尽くしていた。
 頭も、心も、胸の、胃の腑も。
 他のものが入る余地のないくらい、隙間なく。
 ――浸食される、という表現が一番しっくりくるのかも知れない。
 僕の全ては、得体の知れないものに浸食されて、誰に助けを求めることも出来ない。
 誰に?
 どうやって?
 この症状を、言葉にして人に伝えることすらできない。
 日に日に増殖していくモノを、誰かに譲ることも、売ることも、預けることもかなわず、手に溢れ、こぼれるままに任せて僕は立ち尽くしている。
 どうすることも出来ないまま、僕は、沈んでいくばかり。
 やがて、呼吸の仕方も忘れて息絶えてしまうのかも知れない。
 これは、そういう病だ。
 誰にも手の打ちようのない、不治の病。