雨は未だ止まず。
雨はまだ止まず、玄関にただ伏して御方を待つ。
開けた戸から、初夏の緑をつけた木々が濡れる。
私は冷えた空気を吸って、目を閉じる。
あの指先が、指が私に触れるのを待つ。
撫でるように、触れて、離れていく。
目を開けても、もう残り香のみが漂い、
開けたままの戸から、細やかな霧雨が降る。
どうか、あの方を連れて行かないで。
願っても、声を出すことも出来ず。
ただ溢れてくるのは、涙となった想い。
雨はまだ止まず、玄関にただ伏して御方を待つ。
開けた戸から、初夏の緑をつけた木々が濡れる。
夕暮れの蝉が鳴き始める。今はない、御方の声を消していく。
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