さよなら流星
中途半端な幅の川のあっちとこっち。
ロミオとジュリエットみたいって君はよく言ってたね。
でも僕たちの障害になるものは、何もなかった。何もなかった
から、ダメだったのかな。
川を挟んで歩いたね。携帯で話しながらだから、すぐ隣にいる
みたいだった。目をこらすとあっち側で君の携帯の光がかすかに
見えて。曲がり角でバイバイと振られる携帯は瞬く星のようだった。
最後の日、やっぱり川を挟んで歩いた。でも携帯は手にしなかっ
たよね。
もう何も僕たちに話すことなどなかったから。
ああ、これで本当に終わるんだ。
そう思いながら曲がり角で目をこらす。
君のシルエットが、携帯を取り出すのが見えた。小さな明かりが
ついた。
僕に向かって最後に一度振られた携帯は、星のようにすっと流れて、
そして消えた。