キズハ
「ミミまだ痛い…?」
「時間経ってるんだ、痛いわけない…」
しんしん、音が消えていく
夕暮れを過ぎた夕闇が
ゆっくりおもく乗りかかる
一番星が
頭上に見えて、ちかりと光る
キズハがまぶしそうにそれを見て
「一番星だ」
とつぶやいた
以前、キズハは青あざとたんこぶを作って
学校に来た
髪はぐちゃぐちゃに乱れ、
それでも笑っていたので
僕は本気で、耳が真っ赤になって痛くなるほど、憤慨した
とても、苛苛した、怒鳴りたかった(でも誰に)
キズハはそれでも笑っていた
どうしたの、って聞いたら
父に殴られた、って言ってた
どうして、って聞いたら
少し黙って、もう少し黙って
やっと、
近づこうとしたから、と
絞り出すように言った
その時は、笑っていなかった