大嫌い
「そうかーーー」
伯父さんは笑っていった。
酒も飲んでないのに、酔っぱらってる感じがする。
うさんくさいおっさんだ。
たまらなくなて今あったことをぶちまけて、
あいつがわからない、と言うと、
伯父さんはぽりぽりと白髪の混じった頭を掻いて、
そんで、そうか、と言った。
そんで笑った。
「あのさー、さまな君、闇蟲のこと、あんましらねーでしょ」
「……知りませんよ。あんな気持ち悪い蟲、
知りたくもない。」
そうだ、忘れていた、しじまは闇蟲が取り憑いているんだ。
なんで忘れていたのだろう?右手にべったりくっついているのに。
「……」
微笑みを浮かべて、ぽりぽりと伯父さんは頭を掻いた。
「闇付きにもいろいろな症状が出るけどね、
しじまの場合、性欲が異常に強くなるんだ。」
「……え……」
「闇蟲の体液がいけないのかね、
まだわかってないけれど……
取り憑かれた人は、多かれすくなかれ、
性に対して異常さを増す。
しじまはまだいい方だよ、自分で自制できるしね。
ひどい人になると、一日10回ぐらいセックスしないと
収まらないらしい」
はは、と伯父さんは笑った。
「ずっと抱かなかったんだろう?」
戸棚に歩いていく伯父さんをぽかんと見ていた。
なんだって?
「しじまはよく我慢した方だよ。
許してやってくれ。さまな君」
「…………」
伯父さんは戸棚から、『ポルノ』と書かれた―伯父さんの字だ―酒瓶を取り出した。
それからコップを二つとりだして、とっとっと、と、注ぐ。
「前は自分で処理していたみたいなんだがな。
君に嫌われたくなかったんだろう、
必死で普通のふりをしていたんじゃないかな」
「………………」
なんだって?
「まぁのみなさいや、
おごりだよ」
「……おれ、どうしたら……」
「できれば抱いてやってほしいんだがねぇ、
無理ならいいよ、しじまに我慢するな、っつっといて。」
そう言って、実に晴れやかに彼は笑った。