大嫌い
あれから三日経った。
やつは相変わらず、俺のことを「大嫌い」と言った。
ことあるごとに。何かを償うかのように。
意味が分からなかった。
なぜならやつのとる態度は、いつも
―いつも、嫌いな相手にする行動じゃないから。
兄がきて、なんやかんやあって、
疲れているときに野菜スープを作ってくれた。
俺の好きな味だった。疲れた時はこの味、一番体にくるから。
そう言った。
寒い夜にはクリームシチュー、
雨が降っていたらコンソメスープ。
スープが一番得意らしい。それって料理が上手っていうか?
と料理をしたことが無い俺は想ったが、
確かに味はおいしかった。
オムライスや、チキン竜田、サバの味噌煮、やつはなんでも作った。
食材は伯父さんが持ってきた。
嫌いと言われるたびに、胸が痛むようになった。
確かめ合うように、二人でいった。
―俺のこと嫌い?
―ああ、ダイッ嫌いだ。
―お、おれもさ、おまえのこと、き、きらいだよ。
そして笑うやつの顔。まるで幸せそうに。少し戸惑った笑顔。
ずっと、セックスはしなかった。
闇付きにそれがどれほど酷なことか、俺は知らなかった。