リーちゃん
空に青が満ちてる
雲が少しだけ流れてる
リーちゃんは黒い短い髪のえりあしを
ぎゅうっと結んで
デクノボウみたいに突っ立って
柔らかい笑顔で、僕を見ていた
白い雲
あったかい風に
草花が揺れてる
もう、五月だね
初夏の季節が
もう、くるね
「じゃ、一回さよならね」
そういうと
「お前は強いな」
そう笑った
「違うよ」
笑って見せたら
少し黙って
「そうだな」って
言った
「またね」
「うん、またな」
ふたり、いっせいのせで別れた
風が吹く
風が吹く
一度だけ突風が
びゅううっと
吹き上がって消えた
たんぽぽの綿毛が
いっせいに飛び立った
振り返ると
リーちゃんの姿が
その綿毛に隠れるように
歩いてる
さくさく、と土を踏むたび
ぼおっと綿毛がその足から飛び立つ
先へ行こうと
先へ行こうと
綿毛が飛び立つ
一度も、振り返らなかった
振り返らなかった
ぼろっと、なんでか
涙が、出た
すごく熱くてびっくりした
リーちゃん