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そこにあいつはいた。

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 一通り話が終わり、俺が言葉を切っても、飯田は何も言わなかった。血走った両眼を見開き、血色の悪い唇をきっとひき結んで、こけた頬を細かく震わせている。その鬼気迫る形相に、思わず座っている回転椅子が後退った。
「な、何だよ。怖い顔して……」
「草薙さん、……」
 飯田はようやく開きかけた口をいったん噤むと、何をか言い淀むように視線を泳がせてから、震える声を絞り出した。
「ヤバいよ、それ」
「ヤバい?」
 突如として劇画調になったギャグマンガの登場人物さながらに、飯田は深刻な面持ちで深々と頷いた。
「一体何がヤバいんだ?」
「草薙さん……」
 飯田は再び言いにくそうに目線を逸らして口を噤むと、数刻俯いたまま逡巡していたが、ゆっくりとその顔を上げると、噛みしめるように一言、こう言った。
「死ぬよ」