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Gothic Clover #02

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 人飼が黒い目で写真に見惚れながら言った。
 見惚れるのもよくわかる。それぐらい、よく出来た写真だ。この死体は、一つの芸術作品かもしれない、と思えるくらいに。
 死体の肌は白く、光彩は調整されていて明るすぎなく暗すぎもなく、そして料理は色鮮やかに写真の真ん中で主役を張っている。

「食事中に見るもんじゃねぇな」

 そう言いながら掻太はハンバーグを頬張った。

「他に無いカナ?」

 そう言ってボクはファイルの中を再度覗いた瞬間、
 星が飛んだ。

「なーにやってんだ? コラ」

 狭史さんだった。
 ボクは狭史さんの拳を喰らったみたいだ。さすが警察官。犯人逮捕のために鍛えてある腕力はボクを痛みによって悶えさせるには充分に強かった。
 あー、痛い。
 狭史さんはボク達から資料と写真を取り上げると素早くファイルにしまった。

「おいおい、食事中にそんなグロいもん見て大丈夫かぁ?」

 坂造さんが笑いながら言った。

「もーどーにかして下さいよこのガキ共」
「あっはっはっはっ」
「笑い事じゃないッスよ!!」
「あっはっはっはっ」
「笑い事じゃないッスよ!!!」

 二人はいつもこんな感じなのだろうか?。

「……この写真、狭史さんが撮ったんすカ?」
「あ? ちげーよ。おやっさんが撮ったんだよ」
「フーン」

 ボクはカレーを食べた。コクがあっておいしい。けどちょっと甘すぎる。

「ごっそさん」

 掻太がスープ皿を置いた。
 気付けばボク以外の人は全員食べ終わっているようだ。
 あれ? ボク一人?

「さっさと食べろよ」
「あー、悪イ」

 ボクはカレーを口の中に流し込んだ。

「……ヨシ」

 ボクは立ち上がった。

「じゃ、行きますか。」

 掻太と人飼も立ち上がる。

「はいおまちー。おやっさんの大スキなパスタだよー」
「あ、詩波サン。ボク達帰るんデ」
「あーはいはい。」

 詩波さんはそう言ってレジについた。

「ヨシ、じゃあ帰るか」

 ボクはそう言って振り返った。

「……ン?」

 その途端、ボクは妙な違和感に襲われた。
 目に写っているのは掻太が食べたハンバーグの皿だ。他にもスープ皿とサラダが入っていた皿、ナイフにフォークにスプーンがある。

「どうした捩斬?」
「え? あ、ウン。なんでもナイ。」

 ボクはそう言ってレジで勘定を済ませて店を出た。
 ボクに続いて、掻太と人飼が外に出てくる。

「じゃ、帰ろうぜ」
「……ウン」
「? どうしたの捩斬クン?」
「いや、なんでも無いんダ」

 しかしなんだろう? この違和感は。

「ま、いいカ」

 ボクは自分に言い聞かせるように言った。

「じゃーなー」

 掻太だけこう言って、ボク達はそれぞれの帰路についた。

作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる