小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Gothic Clover #01

INDEX|10ページ/10ページ|

前のページ
 

 それだけ言って瀬水傍嶺は気絶した。
 2回連続不意打ち。
 反則だろうか?
 知るか。

「あー、とどめ刺したかったのに」
「オマエの場合、本当にとどめになるからヤメロ」

 ボクは適切なツッコミをした。

「ふ〜んこの人が犯人かぁ」

 人飼は気絶した瀬水傍嶺を見ながら言った。

「なんかがっかりするわ」
「犯罪者なんてそんなもんサ」

 ボクは応える。

「早く帰ろうぜ」

 掻太はつまんなそうに言う。
 とどめが刺せなかったのが、そんなに残念なのか?

 瀬水傍嶺。

 山舵高校の女生徒の目玉を食べた殺人鬼。
 いや、この場合、食人鬼か。
 明日になれば、警察にでも逮捕されるだろう。
 ボクはぐ〜っと背伸びをした。

「は〜や〜く〜」

 掻太が急かす。
 時刻は夜の2時。
 帰りにファミレスでも寄ろうかな?
 最後にまた気絶している瀬水傍嶺を見る。

「本当にさ、殺人って何なんだろうな」

 ボクはそう呟いた。

++++++++++

 深夜の公園にボク達3人はいた。
 こういう場合、普通は警察とかに行くのかな?
 でもいいや。
 めんどくさい。
 幸い、掻太と人飼もそう思っているみたいだ。

「いや〜、人飼が無事で良かったぜ」

 頼む、掻太。もう少し声のトーンを下げてくれ。夜って結構、声が響くんだぞ。

「もう、あの教師ったら、学校に忍び込んだ帰りにいきなり後ろから襲いかかってきたのよ」

 まさか、あの日に既にさらわれていたとは。

「今後絶対、あの教師には近付かない!」

 っていうか、多分その頃にはそいつ、逮捕されていると思うぞ?

「なんか飲み物でも買ってくるか」
「あー、私、お腹すいた」
「ご飯貰えなかったノ?」
「うん。丸一日絶食状態」
「じゃあ、なんか買ってくるわ」

 掻太は向こうの自動販売機の方へ走って行った。

「ねぇ……」
「ン?」
「助けに来てくれた時、『人飼の目はボクのモノだ。誰にも渡さない。』って言ったよね。あれってどういう意味?」

 ……そういえば、そんなコトを言っていたかもしれない。
 あれ? なんであんなセリフが出て来たんだ?
 あの時ボクは何を考えていた?
 ……もしかして、この状況、結構ヤバイ?なんであんなコト、ボクは言ったんだ?
 ぐぅあっ
 なんか、メッチャ恥ずかしいぞ。
 下手したら「愛してる、結婚してくれ」って言うより数倍は恥ずかしいセリフを言ってしまったかもしれねぇ!!

「でも、うれしかったよ。」

 え?

「あそこまで行動してくれたの、捩斬クンでしょ? 私なんかを助けようと必死になってくれて、本当にうれしかった」

 おかしいな。
 ボクが他人なんかのために必死になるなんて、ありえないのに。
 今回はただ、ボクは自分の為に動いただけだ。
 人飼の目が、他人に取られるのが嫌だったから、その為だけに。
 でも人飼はボクに礼を言う。

「本当にありがと」

 そう言って彼女は微笑んだ。
 ただ純粋に、微笑んだ。
 ボクはその微笑みを見て思った。
 今までボクが彼女に対する感想は間違っていた。
 彼女はボクのように汚れていないし、壊れてもいない。
 彼女は純粋なのだ。
 彼女はこの世界の汚れを全て受け入れられる程に純粋なのだ。
 ただ、全て背負ってしまうから、黒く、汚れているように見えてしまうだけなのだ。
 そう、それは虫を殺す子供のように無垢で無邪気な、殺人への憧憬。
 だからこそ、きっと、ボクは彼女を気に入ったのだろう。

 ……さて、彼女に見とれるのもそろそろやめよう。
 掻太が帰って来る。
 とりあえず、彼が帰って来たら飲み物を飲みながら、ファミレスにでも行こう。
 彼女の腹を満たすために。

「面白くなってきやがった」
 
 ボクは生まれて初めて人生が面白いと思った。
 面白くなるかもしれないと、期待をしてしまった。

 この機を境にボクと人飼は、友達を始めた。










 黒白詰草 第壱話 了
作品名:Gothic Clover #01 作家名:きせる