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Gothic Clover #01

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 彼は言った。

「現実なんて幻想と同じさ。うやむやで、形もなくて、全て過去に流れてゆく」

 彼が何を言いたかったかよくわからなかったが、彼は何かをボクに言いたがっていることはよくわかった。
 とりあえずボクは黙っていた。

「だからさぁ、お前もいつまでも落ち込んでいるのはやめろよ」

 そこでボクは初めて彼が、志望校に行けず地元の高校に行くことになったボクを慰めているつもりだということを知った。

「それとも、なんだ? 六年連続で俺と同じ学校に通うことになったのがそんなに嫌か?」

 確かに彼、桐馘掻太(きりくびそうた)とは彼が小学五年の頃に転校してきて以来、クラスは違えどずっと同じ学校で過ごしてきたのだ。
 ここでボクは初めて口を開いた。

「別に落ち込んでないヨ。ただ知らない人間が多いから、少し不機嫌なだけサ」

 クラスは人間で溢れている……と言えば少し言い過ぎかもしれないが、それなりの数の人間という肉塊は存在していた。
 知らない人が多いせいか妙に黙りこくってる人間。第一印象を良くしようと妙にハイテンションの人間。ボクは前者だった。
 入学式から今日で一週間目だ。これでもだいぶ落ち着いてきたといったところなのだろうか。

「席に着けー」

 担任の先生が教室に入ってきた。
 HRが始まる。
 どうせこの先、テンプレートに沿った下らない話が展開されるのだろう。
 入学初日の注意だとかなんとか。内容くらいなら予想がつく。
 ボクは先生の話を聞くのをやめて、この前に目の当たりにした事件について思考を開始した。

作品名:Gothic Clover #01 作家名:きせる