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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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とりあえず、不良らしく

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「君がしたことの罪は大きい」
 「はい」
 聞きながら俺はバカじゃねーの、と思っていた。たかが煙草を吸うくらいで大袈裟なんだ、と思った。そんなもので、市民生活が壊れたりすると言うなら、どうぞ壊れてくださいって言うんだ。この国に自浄能力がないと言うことじゃねえか。
 しかしそんなことをいったら退学になると言うこともあり、親には絶対に停学ですませてほしい思われているということもあり、俺は必死に頭を下げ続ける。子供というものの弱さを本当によくわかった。大人が定めたルールには大人が陪審官をつとめるシステムがある。最悪だ。子供というものは窮屈に過ごせと言うのか。大人は身勝手だ。
 俺は謝って何とか停学にしてもらい、バイクで家に帰る。そして、家の中にはいる。

 「何でおまえがいるんだよ」
 「うるさいわね。せっかく私がきてあげたんだからサービスしなさいよ」
 「・・・てめぇ」
 「停学記念パーティよ」
 「学級委員らしく必要以上にまじめになれよ。今後は煙草を吸うなとか」
 「言ったってあなたきかないでしょ?だからこう言います。今後は見つからないようにね」
 「・・・おまえ本当に学級委員か?」
 「この腕章が目に入らぬかー」
 「ずる休みする学級委員がどこにいる」
 「いいじゃない、たまには」
 「いいから学校行けよ。俺は居間からゲームするんだから」
 「じゃあ2Pで」
 「・・・授業いってこいっての」
 「まじめだねえ」
 「おまえなあ、少しはいい加減にしたらどうだ?」

 「ひどいなあ、少しぐれたいのに」
 「はあ?」
 「ぐれることはいいことだと思わない?」
 「なにいってんだ」
 「正直、もう窮屈だから。いい子いい子されて喜ぶ女じゃないんだよ」
 「いやそうだろ」
 「決めつけないでよ」
 「だっておま」
 泣いている。何のために?
 「死んでくれる?」
 「・・・何でだよ」
 「いいじゃん。見つからなければ、あの崖までいこうよ。そこで死ぬの。私とね」
 「・・・まるで俺がおまえのことを好きみたいだな」
 「違うの?」
 否定できない。ばれていたのか。よりによって相手に。
 「さあ、いこうよ」
 誘われるまま、俺はバイクを駆り、彼女とともに崖にだいぶしようとする。そして、ふと気がつく。こいつ、不良にあこがれすぎじゃないか?
 言い出さなくては、こんなことのために死んではだめだと。こんなことにあこがれるなと。こんな俺にあこがれるな、と。しかし、体はこいつの心地よさに縛られて、ブレーキ一つ操作できない。加速が加速を巻き起こす。こいつが、そんなことのために、死ぬのは解せない。親御さんも泣くことだろうよ。
 「・・・」
 何で言い出せない。何で止められない。そして、空中に放り出される。

 #

 気がつくと病院のベッドにいた。
 「・・・なんでここに」
 「何でって、飛び降り自殺をしたからでしょうが」
 まあ、そうかもしれない。
 「君たちの年だと停学でも死にたがるものだものね。大丈夫、先生たちも君を同行するつもりはないらしいよ。安心しな」
 「そうっすか・・・」
 俺はふと、気になることがあった。

 「女の子はいませんでしたか」
 「・・・彼女のことが気になるんだね」
 「ええ、もちろん」
 「死んだ」
 理解ができなかった。何で俺のために死んで、そして俺だけ生かすんだ。俺に言われなき罪を着せるんじゃねえよ。というか、・・・。

 俺をひとりぼっちにしないでくれよ。

 #

 学校で、怖いものしらずの不良を続けていて、彼女だけが唯一の目の上のたんこぶだった。俺はまさか女を殴るわけにもいかず、また、陰湿ないじめは俺の好みではなかったため、とても学校では窮屈だった。何でこいつは怖がらないんだ。
 俺は彼女をいつも憎く思っていた。消えればいいのに。消えればいいのに。

 その念が、彼女にも徐々に伝わる頃、俺は彼女を恋していた。

 科学者の連中は、思い続けると恋するものだという。理解ができない。恨みの敵に思いを馳せるようになる人間。それは人間につけられた自浄能力なのか?

 #

 俺はなぜか本を読んでいた。理解ができない難しい言葉で書かれた純文学という奴を。芥川、ツマンネ。鴎外、ツマンネ。漱石、ツマンネ。川端、ツマンネ。三島、ツマンネ。志賀、ツマンネ。二葉亭、ツマンネ。一葉、ツマンネ。
 ツマンネ。ツマンネ。ツマンネ。ツマンネツマンネツマンネツマンネ・・・。

 そんな中、なぜかヒットしたのが、太宰である。

 恥の多い生涯を・・・。

 彼は自殺を愛人と試みて一人生き残るということがあったらしい。そんな彼が、本当に近く思えた。煙草に手を出した俺と、薬物に手を出した彼。
 彼は、何のことはない、ただの廃人だ。廃人なのに、みんな共感してしまう小説を書き上げた御仁である、ということ。
 こんなのにも小説は書けるんだぜ。

 俺にかけなくてどうする。

 俺が文芸部を訪ねた理由だ。