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中央部から、煌々とした光が発せられ、徐々に、その勢いは回転を上げ、風を撒き散らし、放射する輪と共に、細波が、草木を倒して行く。
そこに、一人の男が、吸い寄せられるように、草木一本一本を除けて入って行く。
「台風の正体を突き止めたくてさあ、俺雨の中、とりあえず、強風目がけて走った事があるんだ」
「おい、と言うか、お前言う事やる事めちゃめちゃじゃないか」
「そんなもん考え次第でどうにでもなる」
「それも可笑しくないか」
「いいの、いいんだ俺は、誰も見やしないものって方が、興味があってね」
「もの好き」
「そう、もの好きかもしれないな」
「解らないな、だってそうだろ、台風なんて、どしゃぶりだぜ」
「まあ、俺も言葉で説明出来ないけど、それ以上の、何かを感じるから、それに向かって行くんだと思う」
「それが台風」
「そうそれ」
男は、光に近づくにつれ、走馬灯のように
一歩一歩進むたびに、一昔の、記憶を思い出していった。
それがまるで、ここに来る事を、運命づけられていた事のように写していた。
そして、男は又一歩と大きく進んで行く。