しあわせのふわふわパン
「あ、君は。パンをつまみ食いしたね。焼ききたてを人間が食べてはいけないんだよ」
「ご、ごめんなさーい」
ミルちゃんのからだはかってにふわふわ、あっちこっちにいって、とうとうまどからとびだしてしまいました。
「たいへんだ。このままでは宇宙までいってしまう」
おじさんは背中のはねで飛んできて、ミルちゃんをつかまえようとしてくれましたが、するりとぬけてしまいます。
そのうち、ミルちゃんはだんだんと下におりてきました。食べたのは二口だったので、すぐに不思議な力は消えたようです。
ところがうんわるく、雲のはしっこからはみだしてしまい、空からまっさかさまに落ちてしまいました。
ひゅー……どしーん!
「あいたたたた」
ベッドからおちて、目がさめるとあさです。
「ゆめだったのかなあ」
と思いながらまどをあけると、ちょうどパン屋さんがやってきました。
「あ、おじさん」
おじさんは、ミルちゃんにウインクしながら人さし指で、しいっとないしょのあいずをしました。
作品名:しあわせのふわふわパン 作家名:せき あゆみ