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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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しあわせのふわふわパン

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ミルちゃんのママは、まいあさおいしいパンを焼いてくれます。
 ところがけさは、ママがごはんのしたくをしてくれません。夕べ、パパと大げんかして、ずっとおこっているのです。
 なれない手つきでパパが作ってくれたのは、黒こげのベーコンと、きみのくずれた目玉やき。かんじんのパンがありません。
 ミルちゃんは近所のパン屋さんへいきましたが、あいにく朝食用の山がたパンは売り切れてしまって、あまいおかしのパンしかありません。
 ミルちゃんが、しょんぼりしてうちにかえるとちゅう、
「おじょうさん、パンがほしいの?」
と、だれかが声をかけてきました。
 ミルちゃんがふりむくと、まん丸い顔にりっぱなおひげのおじさんがいます。
「おじさんはだれ?」
「パン屋ですよ。今日初めてこの町に来ました。うちのパンはいかがですか?」
 おじさんの後ろには小さなトラックがありました。ほろのついた荷台には真っ白なレースのカーテンがかけてあって、いろんなパンがかごに入っています。
 おじさんは、大きくてまっしろな山がたパンを手にとって、ミルちゃんにいいました。
「このパンを食べると、しあわせな気分になりますよ。今日は特別サービスです。お代はいりません」
「ありがとう。おじさん」
 ふわふわのパンはとってもおいしくて、ほんとうにしあわせな気もちになりました。
 なのに、どうしたことでしょう。ミルちゃんといっしょに、おいしいおいしいと食べていたパパが、いきなり泣きだしてしまったのです。
「パ、パパ、どうしたの」
 ミルちゃんの心配をよそに、パパはいそいでママのいるへやにいきました。
「ママ、ごめんね。けっこんきねん日をわすれたぼくがわるかったよ」
 ママはふきげんなかおで、へやから出てきました。そして、なにか言おうとして口をあけたとき、パパはパンをちぎって、ママの口におしこんだのです。ミルちゃんは、ママがもっとおこるかと思いました。ところが。
「もぐもぐ、パパ。もぐもぐ、わたしこそわるかったわ。ごっくん。ごめんなさい」
 パパとママはもとどおりのなかよしになりました。
 次の日。ミルちゃんはお礼を言おうと思ってパン屋さんが来るのを待ちました。でも、いくら待ってもパン屋さんはきません。
「昨日のパン屋さんはもう来ないのかしら」