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僕があなたの側にいられたら。

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初めて出会った時、あなたは少女でした。
高校を卒業して、夢や希望、そして不安をデコラティブな皮のカバンに詰め込んだ少女でした。
少し人と違う所があるならば、あなたはフリルやレエスがたくさんついた服を好み、流行の文化はほどほどに、アンティークな趣味をもっていました。

あなたの夢は、友人と自分のメゾンを持つことです、と、頬を赤くしながら、私に言ってくれましたね。

あなたが私に興味を持ってくれたことで、私たちはマイミクになり、私は、こっそり、ひっそり、あなたを応援することにしました。

それから1年間、あなたと私は、ミクシィで何度も会話を繰り返しました。
あなたの学校でのこと、私の学校でのこと、あなたの好きなもの、私の嫌いなもの。
ところが、最近のあなたのメッセージや日記は、「寝れない」「つらい」「死にたい」というメッセージばかり・・・。

私は、あならのカウンセラーでも、あなたの恋人でもなく、ただの社会人です。
そして自分もマトモな精神を抱えていない情けない人間です。
そんな私が、あなたに対する同情なのか、お互いの傷を舐め会いたいのか、私はあなたにメッセージをおくりました。
「水曜日、私はあなたの学校の近くに行きます。あなたが喜びそうな素敵なもの見つけました」
先ず、断られるでしょう。
私は期待していません。
でも、
「大丈夫です。素敵なものとはなんでしょう?」
私はイジワルく、
「あってからのお楽しみです^^」
と返信しました。

水曜日。私は、母のコレクションからくすねてきた、古い少女雑誌の付録であった中原淳一と内藤ルネのイラストの入った、少し黄ばんだ封筒を丁寧にクリアケースにはさみ、あなたの学校へ向かいました。


あなたは、中庭のベンチで一人、本を読んでいたのを覚えていますか?
一年前と違うあなたは、全身真っ黒なドレスをまとい、美しい金髪は真っ黒。
あなたに、いったい何があったというのでしょうか。
私の姿を見つけてくれたあなたは、目であいさつをして、精一杯の笑顔をみせてくれました。
(痛々しい・・・やめて欲しい。)
私が、正直にそう思った事は許してください。
私は、いつものようにおどけて挨拶しました。
なのに、あなたは、首を傾げて笑うだけ。
「どうしたのですか?」
あなたは・・・、
「・・・・」
私は、とても悲しい。あなたは何故、声を出すことができないのですか。
いえ。正確には、声はでていますが、とても、聞き取れる声ではないのです。
あなたは、必至に笑みを作りながら、かすれた小声で私に言います。
(大丈夫です。昔から、時々こうなるの。しばらくすれば、また話せるようになるんです)

私は、あなたに中原純一と内藤ルネの封筒を差し出しました。
あなたは子供のように、無邪気にとても喜んでくれました。

その姿は、とてもとても愛おしい、けれどどこか痛々しい少女の姿です。
私はあなたを抱きしめてみようとしました。
あなたが人の暖かさで癒せるなら、私はいくらでもあなたを暖めてあげます。
でも、私にはあなたの心を抱きしめる術を知りません。二つの腕で抱くことであなたの魂を癒せるわけもありません。私は、なんと無力な人間なのでしょう。
あなたをただ無心に抱きしめてあげる勇気すらないのです。

いつか、あなたの声は戻るでしょうか。
あなたの魂が誰かに委ねられる日はくるでしょうか。
否。その日は必ずくるでしょう。
あなたが少女から大人の女性になり、社会という私には住めない世界に暮らす覚悟がつくその日までは、私があなたの隣に、そっと立っていようと思います。