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直径、数十キロという巨大な隕石が、地球に落ちてくるらしい。
　恐竜を滅ぼしたものでさえ、十キロ程だというのに・・・、
　そんな隕石がぶつかれば、衝撃で地球は火の玉になるだろう。
　
　最強の生物・ゴキブリですら生き残れまい。
　地球最後の日がまもなく訪れるのだ。
　
　繁華街は各宗教の『終末は近い。悔い改めよ』の大合唱となっていた。
　それぞれの宗教指導者達が互いにののしり合い、
　自称・聖戦士達が、気に入らぬ者を殺傷している中、
　NASAから朗報がもたらされた。
　
　どうやら月が、その隕石と地球の間に割って入るという・・・。
　となると、隕石が落ちるのは月の裏側という事で、
　地球は助かるわけだ。
　
　その話が伝わると、人々の祈りの声は、
　たちまち歓喜の歌声に変った。
　
　数日後、NASAのいう通り、
　隕石は月の裏側に衝突し、
　夜空はまるで昼のように明るくなった。
　
　人々は危機が去ったことを喜び、
　反目し合っていた者達も、肩を組み歓声を上げた。・・・が、
　やがて恐ろしいことに気が付いた。
　
　月が背後から押されたことにより、
　地球に向けてゆっくり落ちて来たのだ。
　
　ふたたび『悔い改めよ』の大合唱がはじまった。


　　　　―――　完　―――