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CROSS 第1話 『特殊部隊『CROSS』』

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 山口がいた部屋は、ある軍艦の中であった。戦艦のような大型の軍艦ではなく、どちらかといえば小型艦の分類に入る。ただ、ここで特筆すべきなのは、軍艦の大きさがどうとかという問題ではなく、「海に浮かぶ艦船ではない」という点だ。
 彼がいる軍艦は、さまざまな「世界」が島のように浮かぶ異次元空間を移動するための艦船なのである……。つまり、彼は今、異次元空間の中にいるというわけだ……。

 異次元空間は、青・赤・黄の3色で構成されている空間が、どこまでも広がっていた。下にはさざなみを立てる「海」が、上にはフヨフヨと浮かぶ「雲」があった。その海の上を、その軍艦は悠々と進んでいる。普通の青い「海」ではなく、3色の「海」というわけだ。
 雲も海も3色で構成されており、そのような空間がどこまでも広がっているというわけだが、この不思議かつ不気味な異次元空間を初めて見た人の中には、驚いて気絶してしまう人もいる……。



 自室を出た山口は、ターボリフト(上下左右に移動できるエレベーター)に乗って、ブリッジへ行く前に、食堂に寄り道することにした。通路を歩きながら、山口はうんざりした様子で、以下のようなことを考えていた。

{世界情勢はいつもどおり不安定とはいえ、戦争中でもなく、今は任務についていないのだから、こんな起こし方をしてまで働かせることはないだろう。仕事といったって、この艦の航行自体はすべてコンピューターがやってくれるし、俺たち人間とかが今やる仕事といえば、そのコンピューターに追加の指示をしたり、つまらないことを質問したり、たまに他の艦や司令部や俺たちのスポンサー様とかと通信するぐらいのものだ。
 まったく、早く退役して退職金をたくさんもらって、故郷かどこかいい世界に移住して、ゲームやパソコンでインターネットとかをしたりしながら優雅な余生を送りたいもんだなぁ}

……と、この仕事に就いてからまだ10年も過ぎていないのに、そんな呑気なことを考えているのだった……。
 考えているうちに、食堂の前まで到着した。山口が食堂に寄る理由は、建前は調子を整えるためだが、実際はできるだけサボりたいという理由からであった……。