灰太郎と政権
この子が死んでしまった理由はお爺さんには全くわかりません。しかし、死んでしまった以上、なんかしてやらなければならないと、そのときお爺さんは思いました。そこでその子供の遺体を火にくべ、灰を家の中にあった何にも使い道のなさそうな瓶の中に入れて川に流しました。
流れ着いた地で、その灰が入った瓶を、拾い上げた娘は、なにをたくらんだのか、それを飲み込みました。それは後に自殺を試みたということがわかりました。しかし結果としては死ねず、そしてなぜか身ごもり、可愛い元気な男の子を産みました。村の長老や周りの大人たちは「神様が希望を与えなすったのじゃ」といっていましたが、娘にはにわかに信じられるような出来事ではありませんでした。そんな娘の心配をよそにその子はすくすくと育ってゆきました。そして、元服の年を迎えて、皆川灰太郎と名乗りました。
折しも政情不安の年。彼は灰から生まれたため、一度もう燃えてしまっていたので、常に冷ややかに物事を見る節がありました。彼は余りに冷静すぎました。その性格は女子共には人気は有れど、男子にはあまり好まれなかったようでした。
彼は、不良やオチこぼれ共を集めると教化しました。そうして、彼らを自分の考えに近づけていきました。彼らはまた別の人たちを教化していきます。そうして、政情や現世に対する研究会が発足します。それはやがて徒党を組み始めました。
彼らは政治改革を訴えて全国から幕府に詰め寄りました。幕府も弾圧に弾圧を重ねましたが、ついに限界がくるところまできてしまいました。
灰太郎はそのすきに乗じて、政権を握り始めました。そして、これより後、彼の家系による政治が執り行われてゆくことになるのです。彼は、トップに断たずして、その責をすべて表の将軍に押しつけるというやり方で、政権を陰から牛耳るのです。ほかの徒党を組んだ連中を利用して政権に潜り込むのです・・・。