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フレンドボーイ42
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novelistID. 608
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Thrown Out【BT3/4】

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 投げ出されて、初めて気づくことがある。俺は、部外者なのだと。シカトされて、初めて気づくことがある。俺は、こいつらにとって存在しないも同じことなのだと。刃で刺されかけて、初めて気づくことがある。俺は、結局、恨み・憎しみ・妬み・嫉みの一切を背負う存在なのだと。
 並立する、様々な人間の感情を総て統合できる者こそが、本当の聖人だ。揺られる者たちを、総て自分の信条とする概念に取り込める者こそが、本当の教祖だ。総ての人間をだまして利用し、そしてそいつらに気づかれぬうちに捨てることができて、初めて彼は悪人を自称すべきだ。かつての詩人のごとく、俺は問いたい。はたして、千里の馬がいないのか。それとも、千里を走る能力を持つ者を見抜くことのできる者がいないのか。・・・答えは明白である。どの世にも、基本ギフテッド・パーソン(Gifted Person)はいる。しかししかるにそれに誰も気づかない、というより、誰も気づこうとしない、ただそれだけである。どんなに腐敗したユダヤ人社会でも、救いを与える者はいた。よいサマリア人を目指したナザレのイエス。救世主メシアとして、父なる神から派遣されたという。そのメシアは、やがてクリストス、キリスト、セビアーとして崇めらるべき「存在」となる。
 勘違いしないでほしいことは、俺はどんな宗教も信じていないということである。正法による社会平和は実現不可能であり、エル・カンターレは存在し得ないと「理性」では考えている。しかし、心の底では、つまり「感情」というたぐいの部分においては、きっとそういうものを信じているのだろう、と考える。この心を救ってほしい、などというものではない。もっと分かりやすく、至極単純明快で、例うべくは、実に晴れ渡り一点の雲もない空のようにすがすがしく透き通る答えである。夜ならきっと望月が見えるだろう。
 どこかに落ち着いていたいのだ。
 人間の一生。総てこの世に生を受けた時点で、まず赤ん坊は母親から投げ出される。次に、やがて遅かれ早かれ、いづれは親とは離別する。途中で出会った素敵な恋人ともやがては別れ、そして生物の宿命であり、結局この世というものからついに放り出される。その恐怖は幾ばくか。どこにも、安住の地はない。ということの恐ろしさを、皆「理性」ではつかめずとも、「感情」的に概念を掌握することはたやすいであろう。つまりそこに救いを求めてしまう。だからこそ宗教団体や自己啓発セミナーなんとやらというものはそこに信者を集められる、というわけである。
 投げ出されないように。それが人間の生活パターンを決めてきた問題である。周りに見捨てられたくない。周りに共感されるように自分が差別されかねないことはできない。そうして本当の個性というひどく醜いものを捨て去り、架空の個性、人にはそれくらい不思議なところがあってもいいかもね、という個性しか付け加えられることがない。
 世界にバカは山ほどいるというが、それはバカになろうとしてきたのであって、そういう意味では天才なんだ、ということがいいたいのである。天才はえてしてその時代には天才であるなどと評価されない。その時代に評価してしまったら、評価した者たちは、きっと不幸になると思っていただけだ。
 俺はそうして俺をさげすんだ奴らをまた一人殺してゆく。その娘がいた。彼女は恐怖におびえている。普段なら俺は殺すだろう。しかし俺はその少女を殺せなかった。
 麗しき少女の、「殺して」の声。それはそれは、たったの一言である。しかし俺には飲めぬ言葉だった。俺は語る。「お嬢さん、俺はあんたの父親に用事があっただけだ」
 「ならば私を陵辱してください」「やる気もない罪はかぶらない。もう十分悪いことしてるんだ・・・そんなちっぽけなことができるかい。あんただってやられるのがいやなんだろう」「私は・・・こうなる日を待っていました」
 理解できなかった。実の父が殺される日を待つだなんて、この娘は体はよくても頭は大丈夫なのか、と疑う。
 「わたしはシータ・ルナといいます。燃しよかったらついていってかまわないでしょうか」「ふざけているのか」「ふざけてなどいません」
 俺は結局彼女を振りきるために、次にあったら勝手にするがいい、といってそこを去る。悪者に情けをかけるなんて「してはいけないこと」だ。