肩の匠 ~高速バス編~
もちろん、アキバ系なんだから場所はアキバ系だ。厳密に言うと秋葉原ではないんだが、そこはほら、アキバ系ってことで。詳しくは追及しない方向性でひとつ、何卒、よろしく、だ。
イベントが終わって握手会にも撮影会もキッチリ参加した。
そうして充分に堪能した俺は、これから新宿発の高速バスで地元に帰るんだ。高速バスで三時間ぐらい。
え? 地元はどこかって? 俺の地元を調べ上げてどうするつもりだい? はっ!? まさかイベント中にみおちゃんと何度も目が合っていたことを知って、ジェラシックパークなボーイになっちまったのかい? みおちゃんはもう俺に夢中なんだぜ? 俺の身にもしものことがあったら、みおちゃんはもう悲しみのあまりに引き篭もっちまうぜ? 心配すんな、独り占めするつもりなんかないからさ。みおちゃんはみんなのアイドルなんだからさ、みんなで分け合おう!
なんで電車を使わないのかって? そうだね、いい質問だね。
電車で往復した方が明らかに早いんだ。乗り継ぎも楽。
でもね、高速バスには電車にはないドキワクがたくさん詰まっているのさ。
バスの席は二列ずつ。そして俺は一人。必ず見ず知らずの誰かと隣り合わなければいけないんだ。
題して席が隣でヒトメボレ大作戦。
おっと、どっちがどっちに惚れるのかなんて野暮な質問はナンセンスだぜ?
バスにはね、発車ギリギリで乗り込むのがいいんだ。俺の隣は誰なのか、そのドキドキを味わえるからね。
座席番号はF3。前から六列目の通路側。
さぁて、今日のお相手は!?
大当たりーーー!
女のコだ。カワイイ。黒ブチの、長方形のメガネを掛けてる。荷物がいっぱいある。これは、俺と同じように今日一日この大東京を堪能してさぞかし疲れているに違いない。だからこその大当たり。
文字数は残り少ないが、俺の戦いはここから始まるんだ。地元に着くまでの三時間で、このコを落とす!
なぁに、俺のテクに掛かれば簡単さ。
くらえ! 必殺、眠たいオーラ!
よし、うつらうつらし出したぞ。あとは俺も眠ったフリをしてバスが揺れた瞬間に右肩を少しずつ寄せて行けば・・・・・・
カクン、コツン。
隣の女のコの頭が、オンザマイライトショルダァァーー!
肩枕成功! 攻略完了!
ミッションコンプリィィィィーーーーツ!
作品名:肩の匠 ~高速バス編~ 作家名:村崎右近