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蒲公英睫毛

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午後三時のお茶の時間。

僕らはテラスから持ち出した木苺をふんだんに使ったケーキを
丸い大きな葉を繁らせた老木の下で頬張った。
葉と葉の合間から零れてくる太陽の光が心地好い。
甘酸っぱいケーキを食べ終えた君は僕にもたれかかってきた。
如何したのかと顔を覗き込むと、君は安らかな表情で気持ち良さそうに睡っていた。
君の閉じた瞳をじっと眺める。

明るい蜜色の髪と同じ色をした睫毛。
短いけれど、透き間なくびっしりと生えている。
其れは一つの黄色い小さな花が集まって咲いている蒲公英の花を連想させた。
そう思い浮かべると蒲公英以外の何物でもないと思えてくる。
きっと、神様だってそう感じるに違いない。
其の証拠に、二匹の瑠璃小灰蝶が仲良く宙を舞ってやって来た。

瑠璃小灰蝶は、君の蒲公英の様な睫毛に留まって羽を休める。
其の時、君は睡りから醒めて、重たそうに目蓋を開いた。
瑠璃小灰蝶は立ち所に何処かへ飛んで行ってしまう。
君は不思議そうに其れを眺めた後、
ぼんやりとした夢現な眼差しで僕を見詰める。
僕らの真上に広がる晴れ渡った空と同じ色の瞳。

「おはよう」と声を掛けると
君は含羞む様に微笑んだ。
作品名:蒲公英睫毛 作家名:畢路