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世界征服やめました

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もうやめるの。
 世界征服なんてもうやめるの、私。

 言っとくけど、私はメンヘラちゃんでも妄想癖のある小説家志望でもないわよ? 本当に本気で本物の‘魔王さま’なんだからっ! 私だけは真実のトゥルース的なアレなんだからっ!

 ほら、近所の○亀スーパー・小川店、知ってるでしょ? あそこの特売日が火曜と金曜だったのが、火曜日だけなっちゃったの。アレ、私だからね? やったの。私が幹部の山田@○亀スーパー・小川店 店長(56)に命じた事なんだから!
 それにそれにっ! ご近所によくある水の入ったペットボトルのネコよけ! 最近よくアレの中身の水が空にされて転がってるでしょ? アレも私。幹部のタケシ@部下は小学4年生(11)に命じてしてる事だからね! だって可哀想でしょ、猫には罪はないのに何で驚かせるのよ。もっとも私は魔王だから、ペットボトルをリサイクルに出す事まではしないの。これが魔王のポリシー。
 あとは……ふふっ。どうしよう? これ、言っちゃう? あー、でもこれは本当にヤバいから! 覚悟して聞きなさいよ? 志まだ屋のビックラウィメンチョコ、アレ買い占めたの私だから! ふふっ? なにビビってんの? これくらい、魔王なんだから当たり前なんだからねっ!

 ……でも。
 ……でも、私、もうやめるの。世界征服の野望なんてどうでもいいの。

 だって私、恋をしてしまったんだもの!

 恋する乙女と世界征服が両立できると思う? ……無理でしょ? 絶対無理。

 だから私、もうやめるの。だから今夜は緊急幹部会議よ!

            *
「えー、そういうワケで世界征服はやめます」
「そうか、じゃあ父さんは特売日、金曜日も復活させるからな」
「うん」
「姉ちゃん、俺もう猫水係やんなくていいの?」
「うん」

 ○亀スーパー・小川店 店長(56)@お父さんと部下は小学4年生(11)@弟と小さくなって会議をしていると、階下からお母さんの「ご飯が出来たわよ〜」っていう声が聞こえてきたので、三人で下に降りていくのです。うん、今日も元気だ御飯がうまい! そして私は恋に恋する乙女なの! ……分かってくれた?
作品名:世界征服やめました 作家名:有馬音文